虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
ヴァルハラ その05
「やるなぁ兄ちゃん! いやー、俺としたことが油断したなぁ! まさか、来たばかりの新入りに殺られるとは!」
「……気にしてないのか?」
「兄ちゃんは気にするか? まあ、ここに居れば自棄に慣れる」
「字が違う気がするんだが……」
翌日、本当に蘇生した男が俺を殺す。
本人にそんな気はないんだろうが、実際に死に戻りしているのだから。
ちなみにここでの評価は──その最後まで生きている、戦乙女などのここに住む者たちの評価の主に二つで決まっている。
なのでどれだけ死のうが、この世界の蘇生システムの恩恵にあやからなければギリギリセーフということらしい。
自前の蘇生スキルを持っているヤツが居ることは、男を殺した後に調査をしておいたから間違いない……『SEBAS』がな。
「ああ、あれからどれだけ殺ったんだ? この俺を殺したんだ……十人くらいか?」
「いや、ゼロだ。いきなり新参者がアンタみたいな凄い奴を殺したんだぞ? いくら戦闘狂だからって、まずは様子見だろう」
「そういうもんか? まあ、景品欲しさにこズルい手を使うヤツなんかは、そういうものかもしんねぇな」
「アンタはどうなんだ?」
調査の中で、ここでは気さくな方が好まれることも判明している。
戦闘好きなことを除けば真っ当な奴らが選ばれる、ここはそういう場所だからな。
「俺は戦うことが好きだからな。それ以上は特に……ああでも、アレは欲しいな──神族と殺り合う権利!」
「……もっと役に立つ物はないのか?」
「あとはそうだな……神殺しの武器とか、秘宝。男なら戦乙女に挑戦する権利か?」
「挑戦? あっ、そんなものもあるのかよ」
強制的な使役ではなく、ちゃんと段階を踏む辺りは好ましい。
だがこの場合、文字通りの意味ではなく違う字が当てられるとかそういうパターンだ。
「俺は一人の方がいいからやったことねぇんだが、戦乙女たちが提示する条件を達成した暁には使役できるんだとよ。で、共闘することができるわけだ……ただし、種族的に成長させるならここの景品が必須!」
「……それ、誰がやるんだよ」
「死ぬ前に独り身だった奴は、最初だけ目指すな。だが、負けるかそのあと詰んで諦めるわけだ。まあ、ごく稀に成功して、神族に認められるようなヤツもいるんだけどな」
「ふーん、俺は妻子持ちだからどうでもいいが……認められるってのは、ルールには書かれてなかったな」
なかなかに、いろんなことを知っている先輩だったようだ。
とある品を取りだし、さらなる情報提供を要求する──うん、つまりは買収である。
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