虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
ヴァルハラ その04
「なるほど……ルールはそんな感じか」
親切に看板が置かれており、そこに詳細なルールが記されていた。
とりあえず、死ぬことそのもので評価が落ちることはないと先に言っておく。
「エインヘリヤルって、死ぬことを望んでいる集団だったんだな。で、死ぬことを前提に戦うのも全然良しだと……あの龍玉探しの戦闘狂バトル物だって、もう少し命を大切にして戦うだろうに」
《世界ごとに、感性自体が異なっているのでしょう。どうやらここには、冒険世界の住民だけでなく武闘世界の住民だった者も居るようですので》
「俺、そこに行く権利すらないのにだいぶ戦闘をやっているよな……まあ、それはともかく繋がっているのか」
《はい。他の世界と接続されており、先ほどの戦乙女が申した通り、勝者の権利を使えばそちらへの移動権限も与えられるようです》
力さえあれば、本当に何でもできそうだ。
唯一の懸念だった『生者』による死に戻り連発も、この世界では肯定されそうだし。
「──おっ、ルールは見終わったか?」
そんな中、男が一人俺に近づいてくる。
古強者という言葉がよく似合う鎧を身に纏い、気さくに話しかけてきた。
「ああ。ところで、アンタは?」
「名前、名前か……すっかり忘れちまった。まあ、そんなのはどうでもいいだろう。それより、ここに来たからにはやることは一つ。さっさと始めようぜ」
「いいぜ……けど、どこで闘うんだ?」
ルールは書いてあったが、そこに戦闘する場所は細かく書かれていなかった。
禁止される場所に関しては記されており、そこ以外ということは分かるけども。
「どこでもいいぜ。この看板はどうせ破壊しても翌日には直るし……運が良いぞ。新人が来たときは、先にこれを隠してから殺すっていうやり方もあるんだからな」
「じゃあ、ここでやるとしようか」
「はっ、ずいぶんと威勢のいい坊やだ……すぐに礼儀正しくしてやるよ!」
戦闘は始まったようで、男は腰に提げていた剣を抜いて接近してきた。
俺では認識できないような速度、そして視覚の外を突くような機動。
ただの能力値頼りではない、地球でも歴戦の戦士が見せるような動き……らしい。
残念ながら、戦闘雑魚の俺ではそれ以上のことは分からなかった。
──『SEBAS』には、すべて分かっていたのだがな。
「チッ、他愛無いヤツだった……はっ?」
「俺の能力だよ。それに頼って生きてきたからな。全身全霊を以って、このままアンタに勝たせてもらう」
「死んでるはずなのに……くっ、畜生が!」
「はいはい、詳しいことは明日話そうぜ?」
先ほど使っていたついでに、モルメスを取りだして心臓を刺し貫く。
念のため、モードを変更して魂魄への影響はないようにして。
……やり過ぎると追放ということはないみたいだが、しなかった場合が怖いからな。
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