虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

ヴァルハラ その03



「この臭い……なんとかしてください」

「しばらくすれば消えるだろ。それより、俺はこの先へ入ってもいいのか?」

「……ええ。ここに来て、門番である彼らを倒した貴方にはその資格があります。遺憾ながら! 資格があります!」

 どうやら臭いが原因だったようで、俺が中に入ることを嫌がっているようだ。
 まあ、俺自身にも臭いが付いているとか、そう思っているんだろうな。

「よろしく……ああ、俺はツクル。特に凄い業績とかを残したわけじゃないが、ここに居る奴らと戦って聖属性のアイテムが貰えると聞いて来た男だ」

「そうですか。名前を言うことはできませんので、ご自由にお呼びください。仰る通り、この地では勝者がさまざまなモノを手に入るでしょう──正々堂々! 戦えばですが」

「ふーん、呼び方はまた会ったら適当に決めるとして……なんでだ?」

「はぁ……先も申した通り、勝者がさまざまなモノを手に入れることができますが──そこには、私たち『戦乙女』も含まれます」

 この場合、職業がではなくそういう役割をしている彼女のような『戦乙女』のことを指しているのだろう。

 しかし、人すらも景品なのか。
 もし『天死』も景品だったらと考えると、手に入れようとしただろうな……いや、敵に回ったときの危険性を考慮して。

「もういいですよね? では、開門します」

「あっ、開けながらでいいから訊きたいことがあるんだが……入ってすぐ、殺されるとかはないんだよな?」

「……問題ありません。皆さま、正々堂々と戦っていますので!」

 真っ直ぐな『戦乙女』なこって。
 そんなやり取りをしている間に手続きを済ませたのか、目の前の巨大な扉は激しく振動してゆっくりと開いていく。 

「ありがとうよ、真面目な『戦乙女』さん」

「……さっさと行ってください。貴方のような方が、どこまでやれるか見物です」

「少なくとも、敗北だけは無いと自慢しておこうかな? 俺は目的の物を手に入れるまでは、死にたくもない」

 扉から漏れ出していた黄金色が、開き終わる頃にはこちら側を眩く照らしていた。
 軽く少女に挨拶をした後、俺はその中へと進んでいく。

「……なあ、『SEBAS』。座標とかそういうの、ちゃんと取れてる?」

《──できておりません。おそらくですが、帰還や座標登録すらも、勝者の特典として組み込まれているのかと》

「すべてがポイント制、か。さすがにやり過ぎな気もするが……『生者』がどれだけ減らすのか、それが問題だよな」

 死に戻りがマイナス評価に含まれるのであれば、そう何度も死ぬことはできない……みたいな流れになりそうだ。

 しかし、それは無理……魔力が籠もっていたのか、開く時の振動で死んでいたしな。


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