虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
天へ逝け 中篇
「というか、その条件って何なんだ?」
「へっ?」
「いや、死ねば逝けることは分かるんだが、条件を満たしたら……ってことだろう? それが気になってな」
「こ、この状況で、ですか!?」
槍を心臓に突きつけられ、すぐにでも死にそうだから、とでも言いたいのだろうか。
だが残念、すでに感情に任せたツッコミが入った時点で俺は死んでいる。
しかしながら、無意識の殺害ではどうやらヴァルハラには連れてってもらえないようなので……改めて、情報収集を行う。
「こんな状況だから、だ。死に方を間違えたら面倒だし、相手は『超越者』だぞ? 用意するに越したことはないと思うんだが」
「それを自身で言うのか」
「外野、いつまでいるんだ。仕事をしに行けばいいだろう?」
「そのような些事などすでに済ませている。それよりも、重要なことがここにはある」
国政よりも人の死ぬ姿が見たいようなのだが、何か特別な死に方をするのだろうか?
俺としてはまったく困らないが……まあ、失敗した時の保険になるからいいや。
一方の『天死』は俺たちの会話を聞きながらも、何かの魔法陣を描いている。
視た感じだと……どうやら、ルーンだな。
「じょ、条件はいくつあって、その一つでも満たせればできます。まず、レベルが250以上であること」
「問題ないな。俺、999超えたし」
「そ、それは視て分かりましたので。次に、職業が【王帝】系や最上位に属している」
「……まあ、今は【勇者】だな」
俺、体がありえないほど虚弱である点を除けば世界最高峰のスペックなんだよな。
世界でもっともレベルが高く、【勇者】という超激レア職に就いている。
おまけに、何度死んでも蘇る『生者』のような称号も保有している……うん、世が世なら、俺を主人公にしているかもしれない。
「あとは……その、殺害数や他者への戦闘による貢献度などによって選出されます。わたしたちはそれを視覚で捉えることができますので──できました! あとは、この陣の上で一度死んでもらうだけです」
何のルーンか分からないが、あとできっと『SEBAS』が解析した結果を報告してくれるだろう。
念のため『生者』の一部機能をOFFにしてから、ルーンの刻まれた陣の上に立つ。
「あ、あの、この方法で誰かをヴァルハラに送るのは初めてなんです!」
「そうなのか? まあ、それならそれで、お互いに初体験ってことだな。どういうものか分からないから、あんまり緊張しなくて良いぞ……ほら、失敗しても蘇るし」
「わ、わたしは……こんな『超越者』になってしまいましたが、もともとは人を殺すなんてことやったことありませんでした。なのでその、他の者と違って少々痛みを伴うかもしれません」
「大丈夫だって。ほら、落ち着いて殺りな」
辺りに精神安定作用のある香を撒き、不安そうな『天死』に吸わせる。
どうやら効いてくれたようで、槍を握り締めて──俺を刺し貫く。
死に方そのものは普通だな……うん、これからどうなるんだか。
視界が暗転し、カウントダウンが始まった死に戻りを見ていると──変化が起きた。
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