虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

天へ逝け 前篇



 集合場所はブリタンニア近辺の草原──つまり、俺が始めたばかりの頃に強制転移させられた場所だった。

 今では転位や転移てんいで簡単に来れるが、まだまだ休人では辿り着けない高難易度のボスが待ち受けているんだとか。

「……時間か」

「『生者』、時間通りだ」

 転移魔術で突如現れた『騎士王』は、普段とは違い王としての風格を漂わせていた。
 なぜかと思ったが、きっとその理由は──隣にいる少女が関わっているのだろう。

「『生者』、彼女が『天死』だ。見ての通り普人族ではなく、天使族に属している」

「よ、よろしくお願いします!」

「……ああ、よろしく」

 見慣れない素材で構成された装備や、背中から生える羽などはいかにも天使であると言えるだろう……『騎士王』の体を使って、俺と距離を取りながら話していなければ。

 ちなみに、口調はどうせ『騎士王』が居るので隠す必要が無いと感じたのと……経験則から、ありのままの方がいいと『天死』を見て思ったからだ。

「すでに両者に説明はしてある。『生者』、すぐに始めろ」

「分かった……初めまして、『天死』様。俺はツクル、『生者』の名を死神様より授かった『超越者』……ってことでいいのか? ともかく、よろしく」

「あっ、はい……本当だ、幾柱も神の祝福を授かっている」

「へー、分かるものなんだな」

 なんて挨拶をしつつも、『魔王の取腕』によって採取した細胞から権能を手に入れる。
 当たり障りのない会話をして、それから本題に入っていく。

「──ヴァルハラに、ですか? あの……本気なんですか?」

「実は、とあるアイテムを『錬金王』さんに依頼しようとしているんだが、貴重すぎる素材は自分で調達することになってな。合法的に手に入れられる場所に行きたいってことで『騎士王』に相談して……こうなった」

「な、なるほど……あまりおすすめはできませんが、たしかにあそこなら、きっとご期待に添えるかもしれません」

 物凄く気になることを言っているが、それはどこも同じなので気にしない。
 そもそもここだって、強引に連れてこられたような場所だし。

「もし、ここで俺が連れていってくれって伝えたらどうなる?」

「【戦乙女】のスキルには、条件を満たした者をヴァルハラへ連れていくことができるものがあります。ですので……その、それでよければすぐにでもできますよ」

「ああ、ならぜひ頼む……『騎士王』から聞いていると思うが──死んでも死なないし、死にたいと思えば死ねるから、体はそっちに委ねる。たぶん、それが条件だろう?」

「は、はい。……よろしいんですね?」

 特殊な死に方を『死天』に登録できる絶好の機会、これを逃すわけにはいかないよな。


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