虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
天を知れ 前篇
始まりの街
とりあえず、空へ向かわねばならないわけだが……その方法は未だに不明。
どうすればいいか悩む俺は、知っていそうな人物を誘い出すために街へ向かった。
「──ああ、知っているぞ」
「本当か?」
「無論、『騎士王』の名に懸けて。しかし、無償で教えるというのもどうだろうか……私とて、ただ頼まれたというだけで情報を吐くほど軽い女ではない」
「…………」
ジュルリ、と聞こえてきそうなほど口元から涎を流す『騎士王』の台詞は、もういっさいの信用を得られないだろうというほどにペラッペラだった。
俺が腕を右へ左へ振るえば、彼女の視線もまた右へ左へ動いていく。
そんなヤツの言葉が、果たして信頼に値するのだろうか?
──どっちもできないだろう?
「ほら、新作だよ。不死鳥の肉を使ってんだから、意外と貴重なんだぞ」
「うむ、理解している! なればこそ、私の貴重な情報を交換するのではないか……。では、頂こう」
俺が手にしていた肉串を受け取り、ホクホクとした不死鳥肉を頬張る『騎士王』。
俺も味見はしたのだが、熱がしっかり通っているような旨味を最初から出せるのだ。
「~~~~! これは、ほぼ生の焼き具合のはずだが……なるほど、これが不死鳥肉というものなのか」
「だろう? 最初からこれで、タレを重ねて付ければ味が変えられる。加工を変えればそのまま熱を放つし、耐性を持つ奴ならもっと凄い料理にできるぞ」
「ある、耐性はあるぞ! だから、その凄い料理とやらをぜひ!」
「……えー」
立場が逆転した。
俺は最悪、『騎士王』に頼まずとも上の世界へ向かうことができるが、『騎士王』は俺から出ないと串焼きを食べられない。
あるにはあるだろうが、彼女はここ以外で食べる串焼きの残念さをよく知っている。
……これまでずっと食べてきたのだ、ある意味調教されているよな。
その結果──
「ふぇんようふぇかいのふぉふぉふぁ……」
「いや、食べるか話すかどっちか……ああ、食べる方なんだな」
「…………んぐぐ。天上世界のことならば、ちゃんと覚えているぞ。『生者』が訪れている冥界同様、入り口はこの世界に存在する」
ただ、冥界に行くのが簡単だったのは、世界が上から下に行くのが簡単という法則が存在したからだったらしい。
なので、死者が生き返るのが大変なのと同様に、生者が天の世界に確実に行くのもまた難しいんだとか。
「ちなみに、私の知り得る限り情報が確実な手段の一つは身投げだ。よく死ぬ『生者』であれば、やってみる価値はあるのでは?」
「……絶対ヤだよ。分かってて言うような奴
には、このセカンドソースをやるのはやめておこうかな?」
「そ、それだけは……!」
俺たちにとってはコントのようなものなので、さっさと済ませて話を戻す。
……死んでいくか、悪くない話だな。
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