虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
冥界狩り その04
「ここだとソルロンが使えな……なあ、もしかして使えるのか?」
《はい、可能です。レムリアで得た転移陣を用いることで、これまでよりも巨大なモノや現象そのものを送れるようになりました》
「一度、試そうか……そろそろ不味いし」
魔力消費を抑えて戦おうとしたら、思いのほか苦戦を強いられることに。
邪の魔物が近いからか、少しずつ霊体たちも澱んだナニカを纏い始めたのだ。
《霊体……いえ、悪霊が保有する能力でしょう。“怨嗟の衣”というもので、見ただけで精神系状態異常を引き起こすうえ、光系統魔法に対する耐性を向上させます》
「銃弾はだから効くのか……魔法じゃないわけだし」
《そのようですね。ですが、それを防ぐ個体も現れ始めました》
「なんだよ、あの闇。光を完全吸収とかズルすぎないか?」
そう、魔法の光に対する耐性を得ていながら、それ以外の光を吸収する個体まで出てきたのだから一苦労。
救いがあるとすれば、吸収量に限度があること……というわけで、冒頭のような発言をしたわけだ。
「──それじゃあ、ソルロン起動」
《承知いたしました──座標指定。次元転送ゲートによる接続を確認。演算処理完了。ミラードローンの配置完了──太陽光線凝縮砲『ソルロン』の準備が整いました》
「てー!!」
《仰せのままに──照射開始》
空に突如、巨大な穴が開いた。
そこからニュッとドローンたちが現れ、これから放たれるソレの準備を行う。
霊たち……『SEBAS』曰くもう悪霊な彼らは、物理法則を無視した浮遊によってその穴目がけて突進する。
何か危険を感じ取ったのだろうが……時すでに遅し。
準備ができていたのだから、あとは配置に付いたミラードローンが調整を行うだけ。
「なんか、アレだな。蜘蛛の糸みたいだ」
《旦那様の世界における、救いの手ならぬ糸に群がる亡者たちのことですね》
「あれってつまり、生きたいから足掻いたってことだろう? なら、今回も似たようなものだろう……ただまあ、光の先にあるのは地獄なんだけどさ」
光が溢れだす。
凝縮された太陽の光が解き放たれ、鏡の性質を持ったドローンたちによって反射と増幅が繰り返される。
そして、この地に光が降り注がれた。
邪そのものなここの主ならともかく、その力を分け与えられた程度で太陽を凝縮したエネルギーの塊に抗うことなどできない。
「ふひー、これなら称号とかもちゃんと得られたんじゃないか?」
《確認します……『悪霊の天敵』を入手していました。効果は霊体系アンデッドと敵対時の弱体化でございます》
「いちおうセットしておいてくれ。前のままだった『異端殺し』を解除していいから」
《畏まりました──変更、完了しました》
称号を複数付けられる『生者』の権能、それを使えばこういう地味ながら役に立つ力を組み替えて使える。
無くてもいいからよく忘れるけど、あればあるで便利なんだよな。
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