虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
冥界狩り その02
妄失の荒野
場を埋め尽くす霊体たちが、生きる者──つまり俺を狙って迫ってくる。
一度種族がリセットされているので、あまり強い個体は奥に行かないといないらしい。
レムリアにも似た冥界だが、彼らと違い完全なアンデッドとしてここに居る存在は扱われる……『冥王』もまた、ただの生者とは異なる存在だ。
「たしかに、亡者が凄いな……これ、しかも声に状態異常が付くんだっけ?」
《はい。アンデッド固有の能力でして、魔力の籠もった声によって精神系の状態異常を引き起こします。音声を遮断するだけでも、防ぐことが可能です》
「まあ……別に活動はできるからいいけど。死んだら死んだで、精神干渉系のアイテムができるな。改良するにも、間違えたら大量破壊兵器になりそうだ」
精神に働きかけるだけのはずの声が、そのまま俺に死をもたらしている。
魔力が籠もっているのも、そうなっている原因の一つだろう。
「だけど、ここなら倒す方法もシンプルなんだよな──『成仏の燐光』」
淡く降り注ぐ光が、霊体たちに当たる。
すると彼らはスッと体を薄くし、そのまま「」存在がこの場から消滅していく。
死後の世界で死ぬ、という不可思議な現象であるが……許可は得ている。
むしろこのまま化けるよりも先に、魂を終わらせた方がいいんだとか。
「ここいらの霊体は全部レベル1らしいし、レベリング目的なら奥へ行くわけだな。そうじゃなくてもいくけど……『SEBAS』、【勇者】の能力ってここでも使えるか?」
《破邪の力も備わっておりますので、可能かと。どれをお使いになられますか?》
「じゃあ、これだな──“光迅具”」
装備したアイテムに破邪の力を纏わせ、強化できる【勇者】の基本能力。
それを発動し、掴んでいたアイテム──銃に光の力が付与される。
ちなみに、銃に使っても本来は弾への影響が無いため真価を発揮しない。
できたとしても、銃そのものが光の力を纏うだけだ。
「けど、これは例外だ──『マシンガン』」
引き金を引いた銃口から放たれるのは、凝縮された光の弾。
そこに【勇者】の力が絡み合い、より純度の高い光を放つ弾丸が撃ちだされた。
「おらおらおら、おらぁーーー!!」
視界を埋め尽くす大量の霊体たちに、無制限に補充される弾丸の雨をぶつけていく。
ゲーム感覚で屠っていくその光景は、まさに快感とも言えよう。
「はぁ、はぁ……うわっ、凄い消費」
《【勇者】というブランドがある分、相応の力と燃費を要されるからです。旦那様には魔力がございますが、それでも無制限に弾丸に光の付与を行う場合そうなります》
「そ、そうか……ふぅ。創意工夫で、どうにかなりそうだな。そこは考えところだな」
今回は無駄遣いが過ぎたということで、反省して次に生かしていこう。
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