虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
情報屋
暗躍街 中立域
「──というわけだ。情報をくれ」
「……いきなり来たと思ったら、全然わけが分からないんだが。というか、いったいどうやって中に入ってきた」
「空間転移」
「……チート野郎が」
部屋の主はぶつぶつと何か言っているようだが、それについてはスルーだ。
予め人形でアポ(場所取り)はしておいたのだから、文句を言われる筋合いはない。
「まあいいや。いらっしゃい、情報ギルド非加入の情報屋『ナウ』へ。何か欲しい情報があれば、相応の対価を払え」
「それ、毎度やっているのか? ちょっと恥ずかしくないか?」
「う、うるせぇな! これまではタイプするだけだったから問題なかったんだよ!」
「つまり恥ずかしいと……やれやれ、こういう大人にはなるなってイイ反面教師が居てくれて何よりだよ」
俺が訪れたのは、友人であり同僚であるタクマが経営する情報屋だ。
中立域という、暗躍街でもレアな場所に出店できたのでどうにか生き残っている。
特に、【情報王】に情報が漏れないというのがとても人気の理由なんだとか。
なんせ異世界からも集めている情報だ、売ろうとする者が居なければ漏れるも少ない。
タクマはこの世界で実績を積み、信頼できる情報屋という地位を獲得した。
比較的安く情報を売ることで、子供たちでも使えるようにしているのも特徴だ。
「今回は普通の依頼だ。聖属性と邪属性、それぞれのボス級モンスターの居る場所を教えてもらいたい」
「……本当に普通だな。実はソイツらを倒すと、とんでもない力が目覚めるとかそういう感じか?」
「うーん、あながち間違ってないか? 自分に隠された才能を知ることができる」
せっかくなので、『運天の改華』に関する情報を伝えておく。
材料だけを持っていても、どうすることもできないからな。
「──そういうわけで、たぶん超一流の人に頼まないとできない。プレイヤーじゃ、何人束になってもダメなんじゃないか?」
「本当、お前の交友関係が気になるよ。とりあえず分かった、今分かっているのはそんな聖とか邪のヤツは普通のエリアボスとして出てこないこと、迷宮のレアカウントに含まれていること……ぐらいだな」
「迷宮か……もううんざりだよ」
「お前みたいに、あんな人を雇えるヤツが言う台詞じゃねぇよ。けどまあ、そうだな……光と闇に関する迷宮だろうな。その場所をとりあえず伝えておくぞ」
そして、迷宮のある場所を教えてもらってこの場を去る。
このとき、代金を支払うのだが前回現実で頼んだ分もついでに払っておく。
「──って、どんだけ払うんだよ!」
「【勇者】だけじゃなくて、他の特殊な職業についても調べてほしい。その依頼料だと考
えてくれていい」
「マジか……これなら新しい道具も一気に買えそうだ。任せとけよ、ツクル。一週間以内にはできそうだ!」
頼もしい言葉を聞き、改めて出ていく。
……迷宮の場所、案外知っていたな。
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