虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
残された焔
権能をコピーすることによく使っているのが、【魔王】の権能を使える『魔王の取腕』という魔道具だ。
しかしながら、それは【魔王】の権能を行使しているというわけではなく、あくまで個体としての【魔王】の細胞を培養して、似た力を使えるようにしたというもの。
なので、【魔王】という職業システムが持つ能力はまた別にあり、今回はそちらを使用していた。
「【魔王】使用中は使えるんだっけ?」
《はい。これは『覇獸』とも似ていますが、あちらと異なり使用法を自動的に理解することができません。そして、知らない能力は行使も不可能となります》
「あー、今の【魔王】は再現した時に相手の能力も理解できるからデメリットにならないわけか……ズルいな」
《そうでございますね》
もちろん、『SEBAS』という概念が一番ズルい気もするがそこを言ってはダメだ。
今回だって、『SEBAS』が居なければ失敗していただろうし。
「焔も無事確保できた。いやー、意外とサクサク集まるよな……凄い恐いくらい」
《旦那様は『冒天』を得るほど、他者への影響力がある存在です。そして、【救星者】である旦那様に何かしらの力が作用していることは疑いようがありません》
「創造神様も、だしなー。これまでの感じからして、ずいぶんと面白いもの好きみたいだし……まっ、職業の可能性が増えるのは俺も嬉しいからいいんだけど」
求めるアイテム『運天の改華』。
残る材料は『聖邪の毒薬』という、聖と邪の強い魔物からドロップするアイテムから製作可能な品が必要だ。
どちらもかなり高位の魔物からでないと、ドロップはしない。
そして今の俺には、そういう魔物に心当たりはない……ちょっと詰まっているよな。
「こういうのは、直接訊いておいた方がいい気がするな。どんどん進んでいるけど、まったく急いでいないわけだし」
そういえば、やり忘れて溜め込んでいることもいくつかあったはずだ。
覚えていないからこそ忘れていたのだが、それらをこなしていくのもいいかもな。
「にしても、この焔って『運天の改華』以外の使用法ってあるのか?」
《はい。不死鳥の死焔を用いた防具には、一度のみ発動する蘇生機能が付きます》
「……乱獲、されないといいな」
ランタンのような魔道具の中に、不死鳥が遺した最期の焔が宿っている。
いちおう死んではいないだろうが、蘇るまでにこれまで以上の時間が必要となった。
ちなみに、【魔王】が奪った権能は死ぬまで返ってこないらしい。
不死鳥の蘇り方は、普通に復活するのと転生する方法があるので後者なら元に戻る。
……俺だって、不死鳥を完全に殺しきりたいわけじゃないのだ。
そうしたら、二度とここで素材回収をできなくなるわけだし。
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