虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

不死鳥 中篇



「──今回もダメか」

 不死鳥が墜ちていく。
 体に巨大な穴が空き、生命活動を維持できなくなったからだ。

 そして、全身から鮮やかな紅色の焔が噴き出し──そのまま火口へ突入する。
 そのとき噴き出したものこそが、俺の求めている『不死鳥の死焔』だった。

 しかし、それはもうマグマの中だ。
 すぐに内部からナニカが飛び出し──不死鳥は再誕する。

「回収が難しいな……まさか、死ぬ代わりにその燃焼力まで強くなるとは」

 最初は普通に取ろうとして、火口へ墜ちて亡くなった。
 その反省を生かし、二度目はドローンを飛ばしたが……燃やされる。

 ならばと三度目、結界で念入りに防いでから確保に向かい──それでも燃やされた。
 それから何度も挑戦してはいるが、失敗続きなのが現状だ。

「これ、どうやったら取れるんだか。全然無理じゃん──『吸死の黒霧』」

 蘇り、こちらに来ようとする不死鳥に霧を吹き掛けてみた。
 生命力を奪われた不死鳥は、そのまま元居た場所へ戻り……しばらくすると復活する。

「まあ、生命力を奪ってもスキルが発動するみたいだな。しかも、マグマの熱でそれは足りない生命力も補っているのか」

 まったく見つからない解決策に悩むが、倒すこと自体はできているので、レベリングが可能となっていた。

 ほんのわずかではあるが、【勇者】へ経験値が注がれていく。
 レベルが上がるのは楽しいので、失敗してもストレスが溜まらずに済んでいるわけだ。

「凍らせても融けるし、逆に燃やし尽くしても特に意味がない。あと、封印したら死なないからそのまま燃えて解除される。本当、どうしたらいいんだろうか?」

《神族の血同様、当時は回収ができていた品なのでしょう。ですので、今とは異なる技術で対処していただきたいと思います》

「となると、『死天』じゃなくて『超越者』の権能を使った方がいいってことか」

《そちらの方が可能性があるかと。旦那様、そちらであれば不死鳥を引き剥がすことができるかもしれません》

 そう、マグマに落ちて復活するなら、そこから遠ざければいいだろうと考えるだろう。
 しかしながら、不死鳥はそこでしか戦わないし、そこから離れると追いかけてこない。

 なので、これまではどうにかできないかと四苦八苦していたが……『死天』は殺すことばかりだけなので、これ以降は権能込みで戦い試してみることに。

「……そういえば、今回は久しぶりに死なないで戦えていたよな」

《普段とは異なり、領空権を確保したうえで一方的に即死のアイテムを放っていたからこそですね》

「……まっ、ここからは元通りだけど」

 遠距離から権能そのものを使うものはないし、異なる手段を用いるしかない。
 つまりは接近戦……死ぬしかないよな。


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