虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
逆侵攻 その05
ここからはひたすら、俺と『騎士王』が無双しているだけの時間が続く。
聖なる装備に身を包む『騎士王』は、あらゆる武具を振るって侵略者を屠る。
魔術で浮いたのであろう多種多様な武具、その一つひとつを達人以上に扱っていく。
綺麗な太刀筋、というか動き一つを取っても洗練されているのだ。
それと同時に魔術が彼女の望む場所から放たれ、侵略者の殲滅速度を加速させている。
「……凄いな、本当に。たとえ真似ようとしてもできない、それが『騎士王』の本質か」
まあ、今やっているのも権能を使っているだけで本気ではないみたいだが。
彼女は『騎士王』だが、職業的にもそれなりに強い職業のはずだし。
──種族、職業、称号の三つがマッチしていた『白氷』と同じようなものだろう。
あらゆるスキルに適性を持つ【普人】、スキルすべてが使えるうえでその成長速度に凄まじい補正をもたらす『騎士王』。
そして、【円卓騎士】たちの長の職業。
これが普通なわけないし、そうだったとしても今目の前で繰り広げられる光景は覆るわけじゃない。
そうなるのは、あくまで俺の持論だけだ。
◆ □ ◆ □ ◆
荒廃した世界に建築物など、人工物などは存在しない。
ひたすら地平線しか見えないからこそ、そこには違和感が満載だった。
「在ったぞ、『生者』よ」
「……なんだよ、アレ」
「調査だけのつもりであったが、よもや中継点の一つを見つけられるとはな」
「え゛っ? あれで……中継点!?」
突如現れた巨大な山。
黒く染まったそれを視た『騎士王』は、それを中継点──侵略者の親玉と繋がる存在だと告げた。
「そもそも侵略者に群れというシステムが形成されているかは分からないが、少なくとも限りなく侵略者を生みだす母体は存在するのだろう。そして、母体から生まれた侵略者を地上に放つ端末が……あれのようだ」
「なんで、そんなこと分かるんだ?」
「…………勘だ」
バレバレの嘘だ。
しかしそれを追及することもできず、今はその中継点とやらに意識を向ける。
「これまでみたいに聖槍で屠れるか?」
「無理だろうな。あれは母体と繋がっているのだ、相応の能力を与えられている。破壊されようと、すぐに復活して侵略者を生みだすだろう」
「じゃあ、どうしようもないのか?」
「いいや、そうでもない」
ニヤリと笑みを浮かべる『騎士王』。
その顔を見ただけで分かった、絶対にロクなことを言わないと。
「──出番だぞ、『生者』。これまでに見たモノが報酬だ、その分は働いてもらおうか」
そんなことだろうと思ったよ!
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