虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
迷宮イベント その15
戦う場所が心の隔てりを無くす、みたいな言葉が有ったような無かったような。
いずれにせよ、その言葉が示す通りフィーヌと少しだけ親しくなった。
「それが彼の『騎士王』様の……」
「ええ、直接ご指導を受けましたので。私のような者であろうと、彼のお方はここまで育て上げてくれました。指導の才もきっとお持ちなんでしょう」
「ぜひ、私も会ってみたいものだ」
騎士剣(軽量型)を振るって『騎士王』の戦闘データを使う俺は、傍から見ればきっと『騎士王』の剣術を修めているようにでも見えるのだろう。
実際、フィーヌがそうだ。
会いたいというなら、串焼き屋の場所を教えてもいいのだが……面倒事は避けたいし、それは止めておく。
「迷宮の攻略は順調に進んでいます。間違いなく、フィーヌの退魔術のお蔭でしょう」
「いや、ツクル殿が時間を稼いでくれているからこそだ。隊長たちに比べ、私は準備に時間が掛かってしまう」
呼び方も変わるぐらい、互いに背中を合わせて戦闘を行った。
そうなると、さまざまなことが見えてくるわけで……。
「その場限りの凌ぎであれば、魔道具を用意しても構わないのですが……フィーヌさんは違いますよね?」
「理解してもらえてありがたい。自分勝手ではあるのだが、やはりこういったことは経験こそが物を言うと思っている。すまないが、もう少しやらせてもらえないだろうか?」
迷宮内に現れるアンデッドたちを、彼女は聖なる光を纏わせた剣で払っている。
しかしそれには準備が必要で、すぐにできるわけではない。
術式の保存を魔道具で行えば済む話だが、一流の者となると息をするように準備ができるので彼女もそれを目指している。
要するにだ──スキルのレベリングをしたいと彼女は言っているわけだ。
「構いませんよ。今回雇ったのは私ですし、妻からもフィーヌのことをよろしくとは伝えられています。迷宮の踏破にご協力いただけるのであれば、それで充分です。私もまた、フィーヌに協力しますよ」
「ツクル殿……感謝する!」
「いえいえ、それは……っと、これでは延々と続いてしまいますね。ちょうどまた新たな反応がありました、そちらへ向かいます」
「ああ、行こう!」
それからも、彼女とサクサクと退魔を行いながら迷宮を進んでいった。
アンデッド以外の魔物が出てこないうえ、ボス以外あまり強くなかったので倒すのも簡単である。
──たぶんここは、新人の光属性スキルをレベリングするための場所なんだろうな。
そんなことを思いながらも、迷宮の奥へと進んでいくのだった。
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