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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

迷宮イベント その14



 貢献イベントにおいて、俺はいくつかの隠れ里を巡った。
 その際に仲良くなった者も、居たはずなのだが……リストには載っていない。

「一番長かったスリャだからこそ、これの妨害に遭っても載っていたんだろうなぁ」

 相も変わらずスタンバイする『騎士王』とい単語をスルーして、傭兵として雇える者が居ないかを探してみる。

 その選択だけはしてはいけない、というかトラブルが引き起こされる気がするんだ。
 ちなみにこれは他の『超越者』や【王】の職業持ちも同じ……程度の問題でしかない。

「誰か、誰かいないのか……せめてあと一人居れば、スリャとのローテーションで回せるわけだし、頼む!」

 条件をどんどん設けていき、『騎士王』たちの表示を避けていく。
 そうして出てくるようになった、言ってはなんだが普通の者たちを調べていき……。

「──あった!」

 呼べそうな人物を雇って、再び迷宮の中へ向かうことに。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 崩れ落ちた拝殿

 廃墟と化した神殿を模した迷宮だ。
 今回、俺と雇った者は共にそこを踏破するのだが……とても不服そうだった。

「……なぜ私が、こんなことをせねばならないのですか」

「申し訳ありません。ですが、どうしてもやらねばならないこと……というわけでもありませんので、気楽にいきましょう。それにです、もし頑張っていただければそのことは私の口から妻へ──」

「はい、私に任せてください!」

「あははっ、ではお願いしますね」

 俺がそう伝えるのは、首輪を付けた女騎士である。
 そういう繋がりがあったお蔭か、どうにかギリギリ載っていたようだ。

 ──しかし、急ごしらえのパーティーなので、彼女の戦闘スタイルは分からない。

 傭兵依頼のリストに記述はあったものの、『騎士王』が全般なんて書かれていることからも、具体的なことなんて不明である。

「えっと、フィーヌ……さんは、どういった戦い方をされるのですか?」

「私は騎士ですので、前衛かと。退魔の術も持ち合わせています」

「お気持ちはありがたいのですが……フィーヌさんには今回、後衛をお任せしたいです」

「……どうしてでしょうか? たしかに私はリンスウェル隊長に比べれば劣っています。ですが、それでもツクル様を守ることはできると自負しています」

 たしかルリがリンちゃんと言っていた騎士だったか……あの人はあの人で、風魔法を巧みに使えるらしい。

 だが、そういうことではなかった。
 俺が前衛に立つ方が、一粒で二度美味しい感覚が得られるのだ。

「ツクル、で構いませんよ。あのときは言いそびれましたが、少なくとも妻の目が届かない場所では。理由でしたね、実はそれなりに戦えるんですよ……妻には内緒です」

「……本当に、ですか?」

「敬語も要りません。ちょうどいいところに魔物が来ましたね。では、さっそくお見せしましょうか」

 騎士っぽい戦闘も、だいぶさまになっているだろう……『騎士王』の他にも、参考になる者が指の数では収まらないほどいたからな。


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