虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

迷宮イベント その13



 スリャと『SEBAS』によるドローン探索があれば、目的地はすぐに見つかる。
 霧が濃霧となったその場所は、森に開いた広場のような場所だった。

「隠れる所が無さそうだな……スリャ、木の上から狙撃できそうか?」

「ああ、余裕だ」

「ならいい。俺が文字通り体を張って時間を稼ぐから、俺ごと狙撃してくれ」

「……お前の事情を知らない者が知ったら、異常者だと認識する話だな」

 時間稼ぎに向いているんだよな、『生者』の権能って。
 最近はさらに強化されたので、よりしぶとく生き残ることができる。

 ──ちなみに、能力の拡張がすべて称号のセット枠増加というわけではない。

 今はランダムらしいが『SEBAS』によると、いずれ俺の望む方向に進化させられるようになるらしい……チートになるな。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「さて、時間を稼ぐとしますか」

 現れたのは、背中から霧を噴きだす亀。
 俺を捉えると咆哮をあげ、さらに噴出する霧の量を増やした。

「まずは霧を対処か──『風閃靴』」

 魔道具化に成功した『風兎』の能力を宿した靴、『天翔靴』の上位互換とも呼べるこの靴が風を纏い、霧を呑み込んでいく。

「見つけた──捕らえろ、『神狼捕鎖レージング』」

 霧の中から出てきた亀に向けて、獣人の国に眠っていた国宝を投げつける。
 鎖型のそれは起動すると、亀の周りをグルグルと周り──きつく縛り上げた。

『────ッ!?』

「能力使用不可だからな。これで霧はもう出てこないだろう……『風閃靴』」

 これ以上霧は出てこないので、もう一度靴の能力を使って完全に辺りの綺麗にする。
 そうなると亀は俺を殺すしかなく……吶喊してすべてを終わらせようとしてきた。

「じゃあ、よろしく」

『ああ、分かった』

『────ッ!?』

 風魔法で伝えられた声が了承すると、一発の銃声が鳴り響く。
 その途端、亀は驚愕と共に咆哮をあげ……動きを止めて地面に倒れ伏す。

「お疲れ様、スリャ」

「……凄いな、これ。銃声まで消すことができるのか。今回はツクルにタイミングが分かるように付けておいたが、今度からはそうする必要もないみたいだな」

「驚きはするが、別に死なないからな。もしまた狩りをする機会があったら、フリュが驚かないようにやってみるのもいいかもな」

 彼の愛鳥の名前を告げて、誘っておく。
 傭兵システム上、別に何度雇っても問題はないが一日一迷宮という制限があった。

「じゃあ、また明日誘ってくれ」

「ああ、俺もスリャとやる狩りはいつも楽しかったからな。もっとやりたいよ」

 なので今回は、これにて終了。
 また誰かを誘って、踏破をしてみよう。


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