虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
迷宮イベント その12
「──というわけで、力を貸してくれ」
「……そういうことか、分かった」
厄介な奴らばかり載っているリストだが、条件を絞って調べてどうにか見つけだした頼もしい元パーティー。
少し尖った耳が特徴のエルフ族、中でも特殊な武器を扱う男に依頼を行った。
彼の名前は『スリャングス』、エルフなのに狙撃銃に目覚めた男である。
ちなみに酒を酌み交わしたりもしたので、面倒な敬語は取っ払っているぞ。
「そういえば、銃の調整はどうだ? 派遣している人形たちでもできていると思うが」
「元の状態を維持はできている。だが、新しいことを試せないのが問題だな……ツクル、やってもらえないか?」
「いいぞ、何をしたいか……はまあ後で言ってほしい。その前にスリャにはこれを使っての感想を教えてほしい」
「これは?」
見た目はただの狙撃銃なので、あまり違和感を覚えないのだろう。
だが、それを俺から受け取った途端……驚いた表情を浮かべた。
「軽い……だが、内包された魔力の量は前のよりも高い。これはいったい」
「弾丸を光から生成できるようにしたんだ。だからスリャは弾丸を選ぶだけ、指定通りの軌道で飛ぶようになる」
「それはそれで、扱いに最初は戸惑うことになりそうだな。だが、威力に難を感じていたのもまた事実。使わせてもらおうか」
そう言って、狙撃銃を構えるスリャ。
何度も使っているので、だいぶ様になっているようだな。
性能テストなども踏まえて、渡すことにしたのは正解だったか。
◆ □ ◆ □ ◆
迷吸の樹海
霧が漂う森の中、俺とスリャは探索を行っていく。
エルフ族は特殊な霧を掻い潜る能力を持っているので、探索そのものは簡単である。
「そういえば、俺以外に仲間を雇うことはしなかったのか?」
「……はっきり言うと悪いとは思うが、他が強すぎるからな。もしこの場に里長たちが居たら、どうなると思う?」
「迷宮の楽しみも何もないな、全部一瞬で終わるわけか……ああ、そういうことか」
「俺が迷宮を楽しむためじゃなくて、効率よく踏破するためなら呼んでもよかったんだ。けど、今はそうじゃないからな」
それこそ『騎士王』とか【魔王】を呼んでパーティーでも結成すれば、最強とでも呼ばれて崇められるだろう。
けどそんなにこだわることもないし、優勝はやはり家族に取ってもらいたい。
俺がそうなるのはチート臭いし、求めているわけでもないからな。
「ツクル、そろそろこれの試し撃ちをしておきたいんだが……いいか?」
「そうだな……せっかくだし、最初はボスに使って視たらどうだ? ほら、もうすぐそこだし。なんかその方が縁起が良くないか?」
「そういうものか……?」
「そういうものだ」
と、無理に促して守護者と戦うことに。
狙撃銃だからな、普通に試し撃ちをしていたら時間が掛かりそうだ。
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