虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

迷宮イベント その09



 空から大量の鳥たちが降ってくる。
 対策をさせないためか、その種類は豊富でいちいち鑑定をしても識別できない。

 まあ、そもそも使うことなんて滅多にないスキル、そこは気にせずやることと今後の予定について話しておく。

「ああ、『SEBAS』。これ以上取られると面倒だから、次の番になったら行けるようにしておいてくれ」

《畏まりました》

「これで準備はいいか──“精辰星意”、その力を示せ」

 先に起動した『星域』、これは一時的に周囲を『アイプスル』にできる代物だ。
 擬似神代魔道具、というこれまた激レアなレベルまで昇華できたアイテムである。

 それにより、アイプスル限定でしか使えない“精辰星意”が使えるようになった。

「墜ちろ──鳥ども」

『──ッ!?』

 効果は究極のデバフ。
 能力値だけでなく、身力値までもが対象に含まれたそれは、『星域』の発動圏内に入った鳥たちをことごとく墜としていく。

 迷宮に現れる魔物のレベルなど高が知れている、その時点で効果は絶大だ。
 俺のレベルは900超え、なので今回問われるのは発動の合否ではない。

 どれだけデバフが浸透するか、確実に成功するのだから気にするのはそこだけだ。

「八割減、しかも発動中は固定されると……我ながらチートな能力を得たモノだな」

 レベル差分の100辺りが、分割の制限なのだろう。
 種族レベルを上げやすい【救星者】だからこそ、そんな能力が与えられている。

 鳥たちは調子を取り戻すことなく、ほぼすべてが地に墜ちていった。
 だがほんの一部、弱体化されてもなお耐えられるだけの能力値を持つ魔物が居た。

「【救星者】だからこそ、俺には限界が存在しなかったのかもな……『超越者』にも制限があるんだから、もう一つの要因とも言えるこれが理由なんだろう」

 俺はそんな奴らを気にも留めず、考察を続けている。
 自分で手を下さずとも、一度発動した能力は止まらない。

『──ッ!!??』

「一定時間経過、だ。もう八割、貰うぞ」

 これが恐ろしい能力なのだ。
 そもそも侵入者を迎撃するための能力らしいので、対象が居なくなるまで何度でも発動し続ける。

 最後に1か0になるまで、この能力は星を侵そうとする者たちを弱らせていく。
 たとえそれがどんな強者であろうと、最後には【救星者】に勝利をもたらす。

「さて『SEBAS』、どうなっている?」

《戦闘が終了、ドローンによる攻撃によって戦闘権を確保しました》

「『星域』を解除、すぐにそっちへ行こう」

 地に墜ちた鳥は人形たちを用意して任せ、迷宮踏破を優先する。
 時間はさっき以上に無い、すぐさま終わらせないとな。


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