虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
迷宮イベント その08
迷宮『欲望の大草原』を駆け抜ける風。
結界に乗り、結界に包まれ、結界に運ばれている俺のことである。
高度はもっとも背の高い魔物に合わせており、それは10mほどだった。
なので比較的入り口に近い場所では、魔物とぶつかることなく進むことができる。
「あとで対策されそうだけどな……うん、その魔物が出る場所から斜めに、飛行禁止用の罠がある範囲を下げていく感じで」
だがそれも、俺が踏破したあとのことになるだろう。
少なくともアイプスルの迷宮は、侵入者が居る場所は編集することができないのだ。
そしてこの迷宮は、一層しかない。
ゆえに必然的に、すべての侵入者を一時的にでも追いださなければ対応できないのだ。
「死んでも粘る俺を追いだすなら、最初からそういうルールにしておかないとな。それこそ『白帰の大雪原』みたいに」
迷宮の奥へグングンと進んでいく。
速度は最初から最大なので変わらないが、着実に目的の場所へ近づいている。
「──見えた、アレだな?」
《はい。しかし、注意点が……迷宮の守護者が戦闘中の場合、他の者が介入することは困難です。そして、それを実行してしまえばイベント内でポイントの計測がされません》
「不正な手段だしな……で、今は?」
《──戦闘中です》
要するに、最短での踏破は無理なわけだ。
一から十まで徹頭徹尾が、俺の……いや、『SEBAS』の計画通りだったならば、誰にも塗り替えられない記録が出ただろう。
しかし、実際は何者かが迷宮の守護者と戦闘していたことによって、失敗に終わる。
「まあ、やりすぎると目立つしな。どうせ最後に調整する予定だったんだ、極限までギリギリは目指さなくてもいいだろう」
《よろしいのですか? 一時的に旦那様とのリンクを切ったドローンを使えば、排除も可能でございますが》
「……分かってて聞かないでくれ。俺はそこまで他者を蹴落としたいなんて、思っていないからさ。そんなことしたら、あとでどれだけ長い時間正座させられるんだか」
《畏まりました。では観測だけを行います》
だが、少々暇になってしまった。
何かしておいた方がいいかな……ということで、少しだけ結界の座標を上にあげる。
すると、突然雲一つなかった草原に、突如雲が生まれ始めて……。
「さてさて、出てきましたよ。面倒臭い実入りの良くない魔物たちが。雪に急かされたあの時と違って、今回はそれなりに余裕があるからな──『SEBAS』、起動しろ」
《仰せのままに──擬似神代魔道具『星域』の起動を行います》
さあ、無双回を始めようか。
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