虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
迷宮イベント その07
次に訪れたのは、『欲望の大草原』といういかにもな名前をした迷宮だ。
すでに情報を休人たちが開示しており、踏破もされているので安全だと分かっている。
「シンプルだからこそ、普通は難易度が高い迷宮なんだな……一層だけ、その代わりにこれだもんなぁ」
安全というのは、下見に来た場合だけ。
そこで利益を得た者にとって、そこは底なし沼のように追い縋る地獄と化す。
「いったいどうなるのか説明してみよう──まず、魔物を倒します」
ちょうど視界の奥で、休人が(普通は)そこまで強くない魔物を倒す。
すると、迷宮限定の現象──アイテムのドロップが発生する。
「すると、本来ではありえないほど大量のアイテムかレアなアイテムがドロップします。おまけに迷宮では滅多に出ないような宝箱も出るので……より奥へ向かってしまいます」
ちなみにフィールドの設定として、長距離の転位や転移は封印されていた。
使える奴はそういないだろうが、やはり対策はされているようだ。
「ですが、奥へ行けば行くほど当然魔物たちも強くなります……ですが、その分報酬もまたレベルアップしていきます」
遠くで二組のパーティーを見つけた。
片方は分不相応の装備を身に纏い、巨大な魔物に挑み……敗北する者たち。
もう片方はボロボロだがそれなりの価値を持つ装備を以って、魔物に勝利する者たち。
無謀と挑戦は違う、そんな言葉がある。
まあ、蛮勇かどうかを分ける境界線のようなモノがあるのだが……この迷宮は、意地悪くその線を無謀へ傾けていた。
さながら餌に釣られる魚のように、喰い付いたら釣り上げられてしまう。
レアなアイテムが欲しいからと、手を伸ばした結果が死に戻りだからな。
「──さて、俺も踏破を始めるとしよう。頼むぜ、『SEBAS』」
《仰せのままに》
転位も転移も使えず、さらに空を飛べばあまり実入りの良くない魔物たちが襲ってくるのでその手段は取られていない。
だがそこにも、ちゃんと突くことができる穴が用意されていた。
「高すぎるから、それに引っかかる。空に判定されない高さ──要するに魔物の身長と同じくらいなら問題ないわけだ」
戦闘をしたいわけではないので、目的地までサクッと進んでいく。
結界を用いた移動法は、やはりどこでも使える便利な手段だ。
「あとは最後の魔物を倒すだけで、核が出てきてはい、クリアっと。『SEBAS』、自動回避と光学迷彩を心がけてくれ。録画とかされていると厄介だからな」
《畏まりました》
さすがに避けた後まで計算して俺はできないので、『SEBAS』頼りになる。
……魔物を倒さなくても得られるとウワサのボーナスを、今回得るためにもな。
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