虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

迷宮イベント その06



 過去のイベントを覚えているだろうか?
 特にバトルロイヤルなのだが、イベント中はアイテムを自販機で売ることができるというシステムが導入されていた。

 大きさなどは関係なく、購入をすると直接休人たちプレイヤーの[インベントリ]に格納される。
 同時に支払いも行われるので、未払い云々の問題なども無い。

 ──つまりは後腐れの無い商売ができる、便利な装置というわけだ。

「本当、イベントのときにこれが設置されると大儲けができるよな」

 迷宮から出た俺は、さっそく未使用状態の自販機をレンタルしてあった。
 ドローンで確保しておいたので、そこに用意しておいたアイテムを納品してある。

《商売に関するスキルの影響を受けず、価格も維持できるのはよいことですね。無論、影響を受けることはございませんが》

「なんだっけ、それ? 自然と価格を安くしたくなるんだっけ?」

《はい。原理は先日の将軍と同じようなものです。交渉の際に魔力の波動が籠もり、抵抗できない者には影響が及びます》

 洗脳と同じレベルなんだな……やっていることが違うだけで。
 俺は対将軍用のアイテムが完成しているので、もう効かないらしいけど。

「まあ、それはいいや。『SEBAS』、どういう系が売れている?」

《今回は対人ではなく、対魔物や対迷宮用のアイテムがやはり売れております。また、変わらずにポーションが売り上げのトップを維持しているようです》

「そこは当然だな。蘇生薬とか万能薬は入れていないが、その下の魂癒薬と魄癒薬は入れておいたもんな」

 一般人が生涯に経験する、死に瀕する状態異常を治すのに必要なのがさらにその下だ。
 今回売ったそれらは、凶悪な魔物などが用いる状態異常や傷を治せるアイテムである。

 今回の迷宮の中に、もしかしたら必要かもしれないと思って開示してみたが……予想通り、どこかの迷宮では必須になっているのかもしれない。

「じゃあ、対魔物や対迷宮用のアイテムは具体的にどんな物が売れている?」

《罠を無効化する石、罠を感知できる石、魔物が忌避感を覚える石などです》

「……なんでそんなに石ばっかりなんだっけか? 俺、いつの間に石マニアに?」

《コストの問題です。複製を行い魔力を通した石に、術式を刻むことで必要経費を極限まで落とすことに成功しました。何より、一定ランク以上の罠の解除に失敗するように》

 要するに、あらゆる迷宮を攻略できる……なんてアイテムは用意しないわけだ。
 世の中には貴重品はギリギリまで使わないとか、そういう考えを持つ者も居るし。

「低コスト版なら、俺の使っているヤツみたいに無限に使えるわけじゃないもんな……良い商売だ、これからもどんどん増産して売り捌いてくれ」

《畏まりました》

「あとはそうだな……金の使い道も、いずれは見つけておかないと」

 なんかこう、金を使ったらできることが少ない気がするんだよな?
 大抵の物は:DIY:で創れるし……まあ、これは別の時にでも考えよう。

 ──今はイベント、迷宮の攻略だ。


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