虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
迷宮イベント その04
今回使えそうな手札は、『死天』によって生成されたアイテムぐらいだ。
あえて改良も改悪もしていないそれらは、正しく他者へ己が経験した死をもたらす。
「──見えた」
《内部に入れば外部の影響は受けることが無くなりますが、雪が降った時点で強制的に排除されることになります。本来、ここはまだ解放される予定では無いようですので》
「……設定がずさんだってことかよ。まったく、こっちでの俺はたしかに異常ではあるけど、それ以上のヤツもいっぱいいるのにな。これぐらい予想していてもらいたい」
愚痴りながらも、空飛ぶ結界を用いての高速機動によって、目的地であるボスの居る洞窟の中へ突っ込んでいく。
内部にも処理し切れていない魔物たちがスタンバイしていたのだが、時間が無いのでそのまま轢いたり透過することで、サクサクと攻略という名を被った作業を済ませる。
「さて、着いた……居たな」
《情報より察するに、『氷結牛頭鬼』であると思われます》
「へぇ……あれが神話の定番、創作物の王道的な相手なのか」
誰もが想像する巨人の頭が牛バージョンの魔物、ソイツが斧を持っているイメージだ。
あとは……毛の部分が霜を作っており、冷気を辺りに散らしている。
「一瞬で終わらせられるかな? とりあえずは──『貫通死の槍』」
槍を投げれば勝手に動きだし、目的座標である心臓目がけて飛んでいく。
ミノタウロスも本能的な部分で、その槍の恐怖を悟ったのか即座に回避を行う。
「……神の槍みたいに自動追尾があれば、この時点で終わったのに──『火竜の呑柱』」
火竜の息吹を模したアイテムは、発動した瞬間に火柱を生みだす。
氷を相手にするなら炎、そんなシンプルで安直な考えで使った……のだが。
「これもダメか……というか、人でもないのにそういう防ぎ方をするなよ」
《氷の内部を真空にすることによって、熱伝導を抑えているのでしょう。この自由性は、魔法ではなくスキルと思われます》
「違いが分からんが……今は時間が無い、無視して終わらせるぞ──『銃殺の弾丸』」
死をもたらす魔弾を放ち、ミノタウロスを狙う……が、こちらも氷を展開され、あっさりと無効化されてしまう。
やけに強いな。
いくつか『死天』製のアイテムを使ってもなお、まだ生きているんだし。
「なら、これでいいか──『狂死の絶叫』」
そのアイテムを発動した途端、辺りにノイズのような音が響き渡る。
さすがに音を氷で防ぐには、時間が足りなかったようで……それを見事に喰らう。
その途端、ミノタウロスは全身を文字通り掻き乱し始める。
だが幻覚でも見ているかのように、悶え苦しむ様子をただ見ているわけにはいかない。
「『喰獣の牙』、これで終わりっと」
前は剣で使ったが、これこそが本物。
獣に関わる存在に使えば、ほぼ確実に殺すことができるアイテム。
今のミノタウロスには、抵抗する手段が存在しなかった。
故にあっさりと牙はミノタウロスに命中、そのまま……ごっそりと体を抉られる。
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