虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
迷宮イベント その02
迷宮『白帰の大雪原』
「白い……一面が真っ白だ」
《ドローンを飛ばし、目的地を捜索します》
「頼む。これ、人力だけで攻略するとなるとどれだけ時間が掛かるか分からない」
基本的には寒防都市よりも北のフィールドと同じなのだが、違う点として侵雪が吹雪いていない点が挙げられる。
なので純粋に雪で遊ぶこともできるだろうし、それなりに視界も良好なので魔物も見つけやすいだろう。
「……あっ、そうじゃないみたいだ。準備をしてくれ、『SEBAS』」
《畏まりました──『命刀[生鳴]』を転送致します》
「ありがとう」
非殺傷の剣を取りだし、準備しておく。
頭の中で鳴り響く死への警鐘を頼りにしながら、自分に近づいてくる反応に向けて刀を振るう。
『ギャンッ!』
「うん、ドレインコーティングもしっかり作動しているな。対人だと試しづらいし、こういうときにでもやっておかないと」
《ですが、問題は力ですね》
「そうだな……押し合いもできないとは」
真っ白な狼が噛みつきに来たので、それを刀で受け止めドレインコーティング──冥界産の靄を纏わせた刀身で受け止めた。
それによって[生鳴]の中に生命力が溜め込まれるのだが……俺は狼の勢いを止めることができず、そのまま引き倒されてしまう。
結界も通常モードだったので、体を支えるだけでそのまま雪へ後ろからダイブ。
衝撃で死んだ結果、『死天』の能力が発動してアイテムが一つ生成された。
「外部から生命力を溜め込むのに、結構ちょうどいいな……妖精界の触媒で上手く組み込めたが、これまでの自然徴収よりも効率は良くなりそうか?」
《そのようです。やはり『白氷』が格の高い妖精であったことが功を奏しました》
「それなりに経験値も溜まっているだろうからな……けど、どうして妖精由来の素材だと上手くいったんだろうか?」
《妖精は妖怪や魔物といった存在ともされるうえ、名の由来は『運命』でございます。死の因果の象徴とも呼ぶべき黒い靄に、なんらかの反応を示したのかもしれません》
まあ、そういった細かい事情はともかく、俺を苦しめていた靄もずいぶんと活用方法が広まっていた。
サンプルを無限に増殖させているので、どれだけ試しても尽きることはない。
そして『死天』が加工した『吸死の黒霧』もあるので、そちらも試すことができる。
「……ん? 少し雲が出てきたな。目的地は見つかったか?」
《はい、すでに》
「なら、急ごう。なんとなくだが、嫌な予感がしてきた」
そもそも、『白に帰す』みたいな名前の迷宮なのだ……展開はほぼ分かったようなものかもしれないな。
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