虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
迷宮イベント その01
イベント世界
「……始まってしまったか」
憂鬱な気分になりつつも、その日を迎えてしまった。
俺たちは迷宮が並び立つ街に強制的に飛ばされ、しばらく過ごすことになる。
イベント中は時間を加速させているので、かなり充実した時間を過ごせるだろう。
しかも調子が合わない人用に、定期的に後から入る機会をくれる辺り、親切だよな。
「けどまあ、一番厄介な奴が参加者じゃないのは幸いだよな。下手したら、プレイヤーよりも優秀な成績を叩きだすわけだし」
すでに休人たちはさまざまな世界を冒険し尽くしており、俺の活動範囲も『白氷』が居た最北とある場所以外は全部に来ていた。
そして、『騎士王』の国であるブリタンニアにもまた、休人が辿り着いている。
何が言いたいのかと言えば……その結果、彼女にも仕事が与えられたということだ。
「けど、結局俺が行っちゃっているからな。異様な迷宮ができてしまった」
片や離れた場所にある魔物が蔓延る城、片や不思議な霧に包まれた山。
そして、機械だらけの時計塔や吹雪が吹き荒れる雪原など……いっぱいである。
「でも、たしか来る来ないはこっちの奴らの自由だからな。こっちに居るかどうか……」
この世界の人々も参加しているようだが、彼らはイベント時のみ休人同様に死に戻りができる状態になっているらしい。
そして、関係次第では共に冒険してくれると……王族とか『超越者』とか、忙しい人はイベント開催の挨拶をさせられているのが現状なんだが。
「挨拶をしに行くのも良いんだが……やっぱりプレイヤーもいっしょだからな。比較的すいた場所は……あそこかな?」
死亡レーダーの応用技術として、どれだけの人が居るのか分かる。
なので人が居る場所は避け、人が居ないような迷宮の在り処を探す。
「……まあ、ここは空くよな」
迷宮についてそれぞれ語ったが、実は迷宮が街から見えているわけではない。
すでに飛ばしていたドローンが、その入り口となる場所を見つけていたのだ。
迷宮はそれぞれ扉が設けられており、そこから遠くにある迷宮へ向かうことができる。
扉自体が一種の魔道具だったため、その反応をドローンが捉えてくれたわけだ。
そして、俺の目の前には吹雪の絵が描かれた扉が設置されている。
「まあ、さすがに『白氷』は関係ないかもだが……あの場所ってたしか、もともとは侵雪の影響で失われた国があるって話だったからな。条件は一定以上の戦力を持つ国への到達かな? 兵力は雪で補っていたし」
それだと機械の時計塔が出た理由が微妙だが、あの人は『皇』なので条件を満たしていたのかもな。
「誰も居ないだろうけど、その分先に攻略してしまえばいいか……目指せ、新たな職業の獲得だ」
なんとなく結果は察しているが、それでも願っておきたい。
……加護って、あんまり使わないしな。
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