虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
迷宮報酬
「……イベント、か」
「なんでそんなに哀愁を漂わせてるんだよ。普通これ、喜ぶところだろ」
「いや、だって……なぁ? イベントで他の奴に絡むより、なんだか向こうの奴らと会う方がイベントよりも濃厚な日々を送れるっていうか……なぁ?」
「全ッ然、その感覚分からないから。というか、いつまでもソロを貫いていると子供たちにボッチって言われるんじゃないか?」
オンゲーをやっていた頃も、ソロプレイをしていることは多かった。
ランダムで初期設定を行った結果が、集団行動に合わない場合が多かったからだ。
「……それは覚悟の上だ。瑠璃も分かってくれているし、いつでもパーティーを組みたいなら連絡してくれって言っているし」
「とか言って、頼む気は無いんだろう?」
「……そりゃあ、なあ。たとえ求められていたとしても、それ以上にルリを求めている人が居るんだろうし」
「らしいな。そういえば最近までやっていた宗教戦争、最終的に全部従えて乗っ取ったらしいぞ。また忙しくなりそうだよな」
神様が存在する世界なので、宗教もまた神様の数だけ存在しているらしい。
祈れば加護が貰える場合があるのだが……俺の場合、そうせずに得てきたからなー。
「で、イベントってのはいったい何をする予定なんだ?」
「迷宮の攻略だってさ。複数用意された迷宮の攻略を行い、その成績によって報酬が与えられているんだってよ」
「迷宮か……知ってるか、一番最初の攻略するとレアなアイテムが貰えるんだってよ」
「知ってる。スキルとか就いていない職業に就けるようになる結晶とか、そういうのも手に入るんだろう?」
……おかしいな、そんな話は聞いた覚えがないんだが。
「いや、俺は神の加護が貰えるって話をしたかったんだが……」
「……いや、そっちの方が聞いたことねぇから。ハッ、迷宮で加護が貰えんのか!?」
「職業か……なあ拓真、簡単に就ける職業とかないのか? ただし、見習い系を除く」
「話を逸らすなよったく……なら、村人とかで良いんじゃねぇの?」
職業なのだろうか、それは?
詳しく話を聞いてみると、生活に必要そうなスキルへの補正がある職業なんだとか。
「それがさっき言った迷宮の報酬に入っていたらしく、オークションに出ていたんだぞ」
「マジか、スゲェ行きたかったよ」
職業に就くことができる、つまりは条件を無視して解放してくれる魔法のようなアイテムが存在していたわけだ。
詳しく話を聞いてみると、あくまで休人だけのご褒美だったらしい。
彼ら側の報酬はレアな武具や魔法の本、そういった彼らの需要に合った物なんだとか。
「あっ、そういえば今回のイベントは向こうの人たちも混ざっているらしいぞ。競争と協力、そういう感じらしい」
「……詰んだな」
「何がだよ」
「来るんだよ──最強とか最凶がな」
交渉云々でどうにかなるだろうか?
今回のイベントはどうやら、これまで以上に苛酷なのかもしれない。
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