虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
抑止力 後篇
「けどさー、それってこれまでの『騎士王』が居るからこそできた組織よねー」
「むっ、知ってたのか?」
「これまでの話から分かるわよ。『騎士王』は危険って、みんなの共通理解だし」
「……そのみんなとやら、詳しく教えてもらおうか」
当然のことなんだが、どうやら本人は気になるらしい。
代々受け継がれ、その才を星のために振るう最後の番人。
己が何かをしようとしたとき、それが世界の害となるのであれば必ず現れるのだ。
警戒はするだろうし、その動向を観察する必要がある。
「そっちの話はいい。具体的に『宣教師』は何をしているんだ?」
「情報を共有を橋渡しで行ってもらっているぞ。危険な『超越者』が居ないか、不穏な企みがどこかで起きていないか……五州の出来事も把握だけはしていたのだぞ」
「まあ、あっちには情報収集能力が高いヤツが居るみたいだしな」
「『陰陽師』もそうだが、『隠者』もだ。五州にも目を向けていたそうだ」
全然気づけなかったな。
もしかしたら『SEBAS』が察知していたかもしれないが、確証が持てない情報は率先して伝えてはこない。
「ちなみに、最近そういうヤバい奴の報告とかってあったのか? あっ、五州はもう言ったから含めなくて良いぞ」
「そうだな……東の街に現れた殺人鬼を、休人の少年が率いるパーティーが退治したという話があったな。なんでも、【殺人王】にあと一歩というところだったらしい」
「……他には?」
「あとは……南の海に現れた海獣を、魔物使いの少女が退治したらしい」
物凄く心当たりのある話ばかりだ。
そんな話をしていた息子と娘が……な。
ちなみにこのとき、妻は他の宗教組織が送り込んだ暗殺者を懐柔したとかそんな話をしていました。
「いずれ、『生者』はそれ以上のことを成し得ると思うが……どうにも目立つのを拒んでいるようだな」
「このあたしが関わってやっているっていうのに、まったくダメな星渡りの民ね」
「……こっちから望んだわけじゃないだろ。別に良いんだぞ、もう関わらなくても。その代わり、この蜜は一生手に入らないと思ってくれても構わないが?」
「くっ、なんて卑怯なの!」
サクッと商談し、『騎士王』経由で届くようにしておいた。
代わりに俺は、彼女謹製の氷や妖精由来のアイテムを貰うことに。
「──では、そういうことで」
「うむ、二人ともよい交渉であったな。利益は私にもある、ありがたく貰っておこう」
「ふん、こんな程度であたしを懐柔したと思わないことね」
再び一杯分のかき氷を用意してもらい……三人で食べ合うのだった。
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