虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
抑止力 前篇
「甘ぁい! なにこれ、すっごく美味い!」
「なかなかやるではないか、『生者』よ」
「……虫歯にならないか気にしろよ。というか、この世界に虫歯ってあるのか?」
「あるにはあるが、高レベルの者には無縁だな。なにせ、耐性のレベルが桁違いだ」
ずっと前にタクマが食べ過ぎると太るだのと言っていたので、食事が身体に影響を及ぼすことは知っていた。
いちおうこの世界では、魔法を使うだけでもエネルギーを消費するのでほとんどの者がスリムな体型だ。
なのに太るって凄いな、みたいなことをアイツは言っていたな。
ずっと前に作っていた、痩せ薬なんかはどうやら不要だと当時は感じたものだ。
「それは良いのか悪いのか……まあ、判断が付かないがそれはいいや。『騎士王』、お前は『宣教師』ってどんなヤツだと思う?」
「むっ、『宣教師』に会ったのか……私は一度として『生者』の来ない集会でしか知らないが、そのときの様子から考察するぐらいしかできないぞ?」
「まあ、今回有ったことを土産話にしてやるからそこから情報を集めてくれ」
ついでに『白氷』にも、五州で起きた出来事について話してみる。
あとは『SEBAS』の見解を交え、感じたおかしな点もセットで話す。
「──とまあ、そんなところだ。割と自由に動いて人助けをしているみたいだけど、別のヤツの意思も絡んでいた……どう思う?」
「『生者』、お前はもう九割がた分かっていることを今さら問うのか?」
「確信が欲しい、それだけだ。たとえ相手が不干渉を選んだとしても……知っている、それだけで注意する対象だからな」
なぜそういった結論に至るのかはさっぱりだが、『SEBAS』は『超越者』に対抗する集団が居ると主張していた。
正義でも悪でも無い、だが力を持っているのが『超越者』だ。
俺はこれまで、そこまで悪人っぽい奴と接触したことはないが……心当たりはある。
最初のイベントで出会った邪精霊。
邪精霊は【勇者】によって封印され、解放の条件が『超越者』の死亡とされていた。
本人ならぬ本精霊に事情は訊いてあり、当時かなり強い『超越者』を見たことがあったそうだ。
そういう奴らが問題を起こし、それに誰も『超越者』が関与しない場合でも考えているのだろうな。
「……まあいい。『生者』の想像通り、私たち『超越者』の中には永い時を生きる者たちが居る。そういった者たちに危機感を抱き、作られた組織があった」
「過去形かよ」
「当初の在り方と今は違うのだ。詳細は省くが、現在では新たに生まれた『超越者』のうち危険な者を調べ上げることを目的としているらしい。殺すわけでもない、ゆえにこちらにも協力者がいる」
「それが『宣教師』なわけか」
どこの世界だって、そういう抑止力的な存在があるわけか。
世知辛いな……なんか、そういうのって。
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