虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

央州戦線 その06

連続更新中です(04/12)
===============================


 すでに時間は朝である。
 人々は活動を始め、少しずつ街に活気が溢れ始める……のだが、違和感を覚えた。

「なんだろうな……この、これじゃない感みたいなのは? これが例の将軍の、洗脳染みた能力なのか?」

《なるほど……感染型の能力なのでしょう。発動しない条件が、将軍に意識があることなどの理由があって、夜は旦那様も気づけずに通過したのかもしれません》

「どういうことなのかさっぱりだが、まあ要するに面倒臭い能力の持ち主ってことか? その能力、意識が無い間も継続して効果を発揮するってことみたいだし」

 そういった部分は、すでに反乱軍たちが調べてくれてあった。
 精神系の状態異常に効くポーションを使えば、ほんの一瞬だけ意識を取り戻すらしい。

 しかしすぐに戻ってしまうため、これではダメだという考えに至ったんだとか。

「それってたぶん、空気感染とか振動で感染してたからだよな? いや、振動はそんなに可能性高くないか? 魔力がある場所、というか自分の魔力を浸み込ませて……みたいな感じか?」

《侵食のようなモノでしょうか? 侵略者のような例もございますが、能力として洗脳を行っているのであれば少し難しい考えかと。ですが、そういった点も考慮しましょう》

「あー、うん。素人の考えをわざわざすまないな。全然当たらないことばっかりだが、少しでも役に立ってくれれば何よりだ」

 それなりの数のオンゲーを経験しているので、当たることもたまにある。
 だがこのゲームはいろいろと凄く、分からないことの方が多いんだよな。

「なあ、『SEBAS』。使える物を全部使えば、暗殺って簡単なのか?」

《確実に成功します。旦那様の生みだした魔道具は、どれも逸品ですので》

「そっか……そりゃあ嬉しいな。じゃあ、一番成功率が高い方法は?」

《旦那様がハイになっておられたとき、お創りになられたアイテムを使うことです》

 ……心当たりが無いな。
 そのときの俺って、だいたい管理を自分自身にも隠して『SEBAS』に任せるから分からない物が多いんだよ。

「ちなみにそれは?」

《水素を使った爆弾でございます》

「アウトだよ! 完ッ全にダメなヤツ!」

 俺はいったい、なぜそんな物を作っていたのだろうか?
 そもそもいつ生みだしたモノなのかさっぱりなので、今さらどうしようもない。

「……確実に周囲に甚大な被害が及ぶだろうに。じゃあ、標的以外には影響が無い手段に限定したらどうなる?」

《そうなると、旦那様が『死天』によって生成された物を劣化させた品が最適かと》

 独りを対象に、みたいな加工をすることも可能だろう……いやまあ、やらないけどさ。


「虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く