虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
五州戦線 その15
「──というわけでね、僕は意図的に戦争を引き起こしたわけなんだよ」
「……なるほど、すべてはそちらに責があったわけですね」
「もちろん、僕がやったことはすべてが善になるわけじゃない。それこそ間接的な殺人にも繋がる……けど、それ以上の被害を一般人が負わないようにしたかったんだ」
「分かっています。それに、事情も理解できましたので……被害は防いでいます」
蘇生薬や万能薬も撒いている。
本当、予想外のことばかり起きる……けどこの選択が、もっともよい結果に繋がると信じているので実行をした。
「戦場における死亡数はゼロです。重傷者もすぐに治癒しておりますので、いずれ体力切れで休戦するでしょう」
「……それも君の権能かい? それとも、また別の力かな?」
「ご想像にお任せしますよ。それよりも、訊きたいことがございます」
「さっきの話だけじゃ足りなかった? ならもう少し、詳しく話そっかな? ──央五州が企む、とある計画について」
そして、『宣教師』は語りだす。
◆ □ ◆ □ ◆
まあ要するに、これまで集めた情報と統合して『SEBAS』が推測した通りの計画を実行していたらしい。
央五州──ある意味壁に囲まれた閉ざされたこの州は、もっとも古い州であり、かつて統一されていた頃の首都だったんだとか。
そして、崇めるのはもっとも初期に近い神であり……ゆえにもっとも偉大だと考える者も居たらしい。
新しい長──将軍らしい──が地位に就くと、自分たちがもっとも偉いとかなんとか言い始めた……それと同時に、例の迷宮化などの実行を始めたようだ。
「僕はちょうどそのとき、偶然央五州に居たわけだけど……問題はその将軍が、他を蹴落としてまで自分たちを至高の存在にしたいと考えていることなんだよ」
「何か、あったのですか?」
「……ちょっと前まではね、街の人たちも猛反対していたんだよ。だけど、城からそんな人たちに演説を始めたら……ほとんどの人は受け入れるようになったんだ」
「……洗脳、ですか?」
その可能性もあるだろう。
普通は言葉巧みだとかそういうことを疑うかもしれないが、さすがに過激すぎるアイデアなので、納得できない奴の方が多いはずのこの意見に賛同する方がおかしい。
事実、『宣教師』も深刻そうにコクリと頷いているし。
しかしまあ、そんなヤツが将軍になるなんて……世も末だな。
「洗脳、というかなんというか……あの将軍以外の言葉を聞いてくれなくなるんだよね。僕も僕なりに食い止めようとしたんだけど、全然訊いてもらえなかった……権能の力も、さっぱりだったよ」
「権能ですか?」
「まあ、その話はいずれ……問題は、このままだと他の四州全部が滅ぶってことだよ」
なんとも壮大な事件を、『宣教師』はモブに告げてくる。
普通、こういうのってショウとかが受けるものなんだけどな。
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