虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
五州戦線 その13
《確認できました。『宣教師』の反応が東五州と南五州の戦場において》
「……いいことなんだか、それとも悪いことなんだか。まあいいや、介入レベルを最大限にしよう。『SEBAS』、ドローンで可能な限り追跡をしてくれ」
《……畏まりました》
相手は『超越者』、そして俺が初めてのグループ不参加者だったことからも、他の者たち──『機械皇』も知っているはずだ。
ならば機械技術の産物であるドローン、そしてその対策なども心得ているかもしれないので、追跡が絶対に成功するわけじゃないことは理解している。
「それじゃあ、俺も行くとしよう。最短ルートを割りだしておいてくれ。『超越者』絡みなら少しぐらい急いでもいいだろう」
《畏まりました。あらゆる手段を許容した、最適ルートを検索……完了しました》
「ならよし──行きますか!」
魔力式原付きを使って、全力全開の移動を始める。
そして、とあるコマンドを音声で入力してさらなる速度での移動を行う。
「──原付きオプション01『光速機関』」
後部のフランジが眩い光を放つと、そこから膨大な量の粒子を解き放つ。
それに押し出されるように、原付きの速度は凄まじい物になっていく。
だが、このままでは地形に合った装甲をしなければならない。
それなりに魔力を消費するが……二つ目のオプションを実行する。
「──原付きオプション02『空翔機関』」
ヘッドライトが一瞬点滅すると、透明な板のような物が光の当たる部分に生成される。
それは宙で斜めに進んでいき、俺が乗った原付きもまた……そこを登っていく。
「結界が無かったら、間違いなく死んでいるよな……こんな寒い場所で、しかも調整しているとはいえ尋常じゃない速度で移動って」
《柔剛一体の特殊結界を用いていますが、光そのものの速度には対応できません。ですがそれでも、目的地到着時間を大幅に省略することが可能です》
「そりゃあここまでしているんだ、ソウならなきゃ困るってもんだよ」
操縦を少しでも間違えたら、空から地面に真っ逆さまなわけだし。
いちおう『SEBAS』による操縦補佐があるものの、外部から干渉されると……な。
「というか、どうしてこんな雲の上まで飛ぶことになったんだ?」
《戦争中。空を飛ぶ怪しげな物体を見かけたとき、魔法と言う長距離に対する攻撃手段を持つ者たちはどうすると思いますか?》
「……ああ、うん。ならそうしなきゃダメなわけだ」
速度が凄いとはいえ、俺の知らないことなどたくさんある。
警戒はしなければいけない……この戦場のどこかにいるらしい、『宣教師』にも。
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