虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
五州戦線 その11
南五州は戦争中、つまり武人たちが挙って東五州へ向かっている。
なので俺……というか侵入者への警戒網も狭まっており、あっさり侵入できた。
「ここか……とりあえず、見た範囲で特出した技術があるってわけでもなさそうだな」
《戦闘に関する技術は、現在ドローンで確認中です。魔法の発現は確認されていません》
「あっ、もう分かったのか。つまり、同じ技術は伝えない、もしくは東と南には関わっていないということか」
《前回の北五州における模擬戦のように、それぞれ技術を開始早々開示するわけでもございませんので、まだ確証は持てません。ですが、それでも可能性は高いかと……》
そりゃあいきなり切り札を開示して、すぐに対応されて倒されるなんて愚の骨頂だ。
そういうのは相手が対応できないぐらいのタイミングで使うのが、ベストらしいし。
「しかしまあ、少し窶れている人もいるみたいだな。やっぱり、戦争ってのは食糧を使うらしいしな……」
《旦那様、いかがなさいますか?》
「……戦争は長引くかもしれないが、ここは商人として働くか。戦争はともかく、市民が苦しむのは別だしな。それで戦争に影響が及ぼうと、まずは彼らを救っておきたい」
《畏まりました。すぐに用意いたします》
商人になりたいと言えば、『SEBAS』が求めるアイテムを提供してくれる。
転送装置によって、アイプスルから備蓄をポケットの中へ……。
「これをやりすぎない程度に、ばら撒いていけばいいのか。だけど……『SEBAS』、やっぱり人形も出してくれ。リスクの分散を頼みたい」
《では、そのように》
追加で転送されてきた人形を取りだし、起動させていく。
中に埋め込まれたさまざまな魔道具や機械が作動し、人の姿を模し始めた。
「それじゃあ、それぞれ販売を始めてくれ。利益とかはどうせ売れれば問題ないから、些細なことでもいいから情報を集めることを意識してくれ」
『畏まりました』
人形たちには人格が与えられており、だいたいのことは自律的に行ってくれる。
たしか……トップダウンとボトムアップ型のAIを擬似的に両方搭載しているらしい。
さすがは『SEBAS』、俺にはよく分からないが俺の役に立つモノをどんどん提供してくれる……前にも少し思ったが、氾濫されたら速攻で負けるよな。
「まっ、そのときはそのときだな。よーし、俺も張り切ってやるかー!」
細かいことを気にしていては、気が滅入ってくるだけ……そういうことは後回しにし、今は救える者を救うことに専念しよう。
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