虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

五州戦争 その06



 特にこれといったイベントも無く、北五州の街を探し終えた。
 ドローンによる調査も同じ結果、どうやら『宣教師』は北には居ないようだ。

「となると、ここから直接行けるのは……東か西か、中央の州だけになるな」

《どの州にもドローンが向かいましたが、どうやら中央の州のみが厳重な警備網が敷かれているようです。わざわざそちらへ向かわれるより、一度別の場所へ向かわれることをオススメします》

「なら、そうしようか。ゲームとかでも、まずは外周を巡ったうえで、それから中に入るモノだからな……だからこそ、裏技とかでどうにか入ろうと苦悩するわけだが。コホン、『SEBAS』はどっちがいいと思う?」

《現在、東五州では南五州との争いが行われております。ですので旦那様には、安全に西五州へ向かってもらいたいと……》

 北五州は同じ派閥の中で、互いの力を試すために戦場で武を競っていた。
 だが東と南はそうではなく、何か別の目的のために争っているのだ。

 その気になれば、戦場に赴き蘇生薬を振り撒くこともできるだろうが……それは俺自身がいなくとも、できることである。

「なら、西から行くことにする。だがいちおう、ドローンを飛ばしておいてくれ。もし戦場に巻き込まれたっぽいヤツがいたら、ソイツに蘇生薬を撒いてやってくれ。もちろん、戦った結果なら無視でも構わない」

《畏まりました》

「……中央は見張りが居るんだな? なら、東と西はどうなっているんだ?」

《そちらにも兵士が見回っておりますが、進む道を少々危険なモノにすれば、安全に向かうことが可能です》

 少々矛盾しているようだが、危険を物ともしない『生者』ならばどんな道だろうと、進むことさえできれば進むことが可能だ。

 ちなみに、中央の州は周りを囲むように壁があるようなので、確実にバレるらしい。
 どうしても行きたいなら、もちろん空間転位でも転移でも使うが……さすがにそこまでする気は無かった。

 というか、中央は何かしら面倒事があるというのが王道だし。

「まあ、やっぱり行くなら西だよな……ルート案内を頼めるか?」

《畏まりました》

「とりあえず、まずは西へ辿り着く。それから南五州でも戦火に巻き込まれていない部分でも通って、それから東。最後に中央を通って……とりあえず捜索は終了にしよう」

《仰せのままに》

 もしかしたら、居ないかもしれないが……それならそれで、『宣教師』以上のトラブルに遭遇するかもしれない。

 そんなことをやり続けたのが、今の俺なわけだし。


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