虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
五州戦線 その04
「『宣教師』、か……」
戦場から去る俺は、ボソリと呟く。
ハセから訊きだしたその名は、おそらく職業ではなく称号……『超越者』としての名前だろう。
なぜなら、かつて貰った『超越者』の住所不定者欄にその名が載っていたからだ。
「頭部が残念なわけでもないだろうが、特徴に関する情報をいっさい持っていないというのはおかしいよな……何かしらの隠蔽技術があるって考えて間違いないか」
《倭島に潜伏しているとされる、『隠者』であれば可能かと。しかし、『宣教師』が彼の者の力を借りる必要もなく、おそらくは単独での行動でしょう》
「あー、すっかり忘れてたなー。『陰陽師』と【刀王】のイメージが濃いからな。他を覚えておく必要性を感じていなかった」
いろいろとやっている、そんな印象を残している二人の強者。
互いに接点があるかは知らないが、会ってもロクなことにならない気がする。
「『隠者』がどこにいるか、それは権能のせいで皆目見当もつかないんだから後回しにしよう。たしか、『宣教師』はこの五州を渡って技術提供をしているんだったな?」
《はい。ドローンを飛ばし、すぐ『超越者』の波動を捜索し始めました。しかし、今のところそれらしき反応はございません》
「そうか……探し始めたばっかりだ。焦らずとも、『超越者』なら必ず見つかるだろう。ゆっくり丁寧にやっていこう」
《畏まりました》
さて、会話に出た五州について話そう。
この世界だと、九州は大きく分けて五つの派閥によって支配されているらしい。
東西南北、そして中央。
自派閥同士で争い、高みを目指しながら他派閥を打ち倒しより多くの領土を勝ち得る。
それを何度も繰り返す戦国時代……五州とはそんな感じのエリアなんだとか。
赤軍と青軍に分かれて行われていた戦も、同派閥によるものだった。
なので邪魔はせずとも、問題はなかったみたいだ……むしろ俺を倒そうとしただろう。
「北州……つまりここだと、魔法を教えて今回はその実地訓練だったみたいだな。邪魔して悪いことをしたみたいだったし、いくつかポーションを置いておいたから、それで勘弁してもらおう」
《旦那様、どちらへ向かわれますか?》
「同じ場所に居ると、要らぬ企みだと感がられるかもしれないしな。とりあえず、全州を巡るぐらいの勢いで『宣教師』の反応が無いか探っていこう。居なかったら観光と転位座標の登録だけして、次に行くってことで」
《承知しました》
細かいことを考えてもあれなので、要するに──楽しんでいこう、そういう考えてやっていくことにする。
……州の数は違っても、気候などは九州と変わらないらしいし。
もしかしたら、いい食べ物に巡り合うかもしれないな。
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