虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

五州戦線 その01



 トンネルを潜った先は──戦場だった。
 原付きを飛ばしてしばらくして、広い場所に出たときのことだ。

「ん? やけに騒がしいな……ドローンはもう展開してあるか?」

《はい。映像を網膜に投影いたしますか?》

「ああ、よろしく頼む」

 すぐに『SEBAS』がセッティングを行うと、片方の視界が切り替わり、ドローンが映す光景を把握できるようになる。

 そこには二種類の人々が存在した。
 赤色の鎧に身を纏う者たちと、青色の鎧に身を纏う者たち。

 互いに互いへ刀を向けて打ち合いを行ったり、杖を構えて後方から魔法をぶつけあったりと……少々ファンタジー感が混ざった戦争が行われていた。

「盛り上がっているな……見た目もなんだかごついし、派手な演出付きの技がいっぱい繰り出されている」

《相応にレベルを上げたうえで、スキルにも磨きをかけているのでしょう。高難易度の武技や魔法を確認できました》

「ああ、うん……これこそゲームって感じがするよな」

 いちおう今の俺ならば、仙術に限ってド派手な技を使うこともできる。
 けどそれって、借り物の力を誇示するようなものだ……うん、恥ずかしいだろう。

「蘇生薬は……止めておくか。魔物相手の戦いならともかく、人同士の争いはその理由が不鮮明だからなー」

《畏まりました。散布を中止し、待機状態に移行します》

「いちおう万能薬は取っておこうか。死者を蘇らせるのは異常だが、傷が癒えるのはギリギリセーフってことで」

《承知しました》

 戦場の中で、どうするかというと……原付きをそのまま走らせてみた。
 ただ、姿を見せれば邪魔になるので、姿は結界で包んで隠しているんだけれど。

「赤軍と青軍……どっちも戦いたくないって兵士はいないな。自分から望んでやっているということか? そういえばたしか、九州の男は肉体的にも精神的にも強い男として恐れられた……みたいな話があったな」

《大和男児、というヤツですね。この世界でも、同様の性質を宿しているのでしょうか》

「少なくとも、レベルはその証明になっているんじゃないか? ……さて、どっちの大将から見ておこうか」

《赤軍は魔法使いの将を、青軍は武士を将として据えているようです》

 この世界だと『陰陽師』しかり、後方職であろうと代表者になれるというわけか。
 どうせなら、生産職もなれればいいな……さすがに難しいだろうけど。

「近い方はどっちだ? ……まあ、数的に赤だと思うけど」

《その通りです。旦那様の位置する地点からだと、赤軍の陣地へ向かう方が速いです》

「よし、じゃあそっちに行こう」

《畏まりました──案内を開始します》

 そして俺たちは、赤軍の陣地へ向かった。


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