虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

参拝



 案内されたのは、『仮宮神社』という場所だった……仮、という部分が気になるが、とにかくそんな名前の神社だ。

「えっ、仮宮じゃなくて『上宮』なのか?」

《はい。旦那様の世界では、ここと同名の場所は年に一度神有月の時のみ七日間開かれる場所です。しかし、こちらではそれが常時開放されているのでしょう》

「何か違いがあるんだろうな……まあ、とりあえず入ってみれば分かるか」

《初めに向かっておきましょう。旦那様の世界の仮宮神社とは、まったく別物と言っても過言ではないでしょうが》

 たしかに、見た感じでそれは分かる。
 仮と言うには少々絢爛さがあり、普通の有名な神社と比べても相違ないほどに改修が行われているようだし。

「神社といえば……まずは鳥居の前で一礼をする、だったな」

 そもそも石の色がしっかり赤く染まっている鳥居、それの前でペコリとお辞儀をして参道を通っていく。

 このとき、正中──つまり真ん中を避けて歩くのがルールだな。
 どうしても渡らなければならないときは、また軽く頭を下げて通った方がいい。

「あとは手水舎で手と口を清めて……さて、お参りだな」

 ちなみにだが、これにも手順が在る。
 一礼して、右手で左手を清めてその逆、右手にして左手で口を漱ぎ、それを清めたあと両手で掬う部分を清めて終わり。

 あとは一礼して終了。
 やるときは掬い直しをしないこと、口を直接つけてはいけないらしいけどな。

「……なんか、神社の参拝講座みたいになっている気もするな。まあいいか、家族のためになりそうだし、映像として最初から流しておいてくれ」

《畏まりました》

「お参りすることは拝殿といい、その前にお礼を45°でやる。そしてそっと賽銭を入れて、鈴を鳴らす──あと、二礼二拍手一礼」

 まず90°の礼をして、右手を少し下げて二回拍手を行っていく。
 そしてお願い事……というか、やることを伝えて再び一回90°の礼を行う。

「家族が、充実できますように……」

 俺も全力で、それに励むつもりだ。
 だが神が居る世界なのだから、少しぐらい祈ってもいいだろう。

「『SEBAS』も祈っておくか?」

《では、ご厚意に甘えましょう。旦那様、代理で行っていただけないでしょうか?》

「了解っと」

 もう一度同じことを繰り返す……ちょっと問題がありそうだが、最悪願い事は自分でやるので構わない。

 少しして、『SEBAS』が祈りを終えたところで鳥居の前で一礼し、ここを去る。

「いったいどんなことを願ったんだ?」

《言ってしまえば、叶わないという説もあります。ここは秘密にしておきましょう》

「そっか……叶うといいな」

《はい》

 参拝も終わったし、次は何をしようか?
 ……まあ、行き当たりばったりだな。


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