虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

住居改造 後篇



「──これで最後か」

《お疲れ様です、旦那様》

 高原の環境をさらに変えてみた。
 いっそのこと、迷宮ダンジョンにした方が楽になるんじゃないか……ということもあって、高原の領域を包み込むことにしたのだ。

「箱庭を再現したものだけど、だいぶ上手くできたみたいだな……星脈との接続はしっかりできているか?」

《はい。各自然現象とのSP共有も確認、マイナス値に出ることはございません。むしろ相乗効果により、時間経過で上昇します》

「まさにいいこと尽くめってことか。なら、他の惑星も同じように迷宮を造って、稼いでいるってことか?」

《迷宮と星核は類似したシステムで運用されていますが、それを管理することは別の権限が必要とされます》

 まあ要するに、迷宮には別の管理者を立てる必要があるってわけだな。
 支配下に収めることはできても、星と同時に管理するのは難しい。

 なので普通は無理だろうが……俺にはスーパー執事AIたる『SEBAS』がおり、それが可能となっている。

 星脈によるスーパーレベリングだったり、完全制御だったり……うん、俺単独じゃできるにしても、どれだけの時間と失敗が必要なはずだしな。

「これにて完結にするとして、情報を保存するか……よろしく、『SEBAS』」

《仰せの通りに》

 迷宮には地形を保存し、破壊されても復元できるシステムが存在する。
 壁を破壊されても元通りになるのは、そういう原理だからだ。

《──完了しました》

「ああ、ご苦労様。これで文字通りの箱庭、『団欒の園』が完成したわけだな」

《おめでとうございます》

「みんなには悪いが、アイプスル外へ向かうにも手続きが必要にしたお蔭で、外界の影響も抑えられるようになったし……よし、改めて招待状でも書くとしようか」

 俺はアイデアを言うだけでいい。
 あとはすべて『SEBAS』がプランを用意してくれるので、いくつか挙げられた中から一つを選ぶ。

「やっぱり、祝いは盛大にしておかないとダメか……うん、ならこれにしようか」

《畏まりました。クローチルやカエンにも協力を要請しましょう》

「そうしてくれ。あとはそうだな……アイテムもいろいろと準備するべきか。これは俺が作ればいいだけだな」

《皆さまの現在位置はこちらで把握しております。すぐに状況を確認した後、旦那様の仕上げた招待状を送りましょう》

 そう、俺の要求だけで家族のやりたいことの邪魔をするのは望まない。
 仕上げるだけ仕上げておいて、そのときを待つだけだな。


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