虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
ギルド問題 その06
魔法陣の効果は束縛、乗った者を決してその場から離さない効果を刻んであった。
その間に扉がゆっくりと開き、階段から降りてくる一人の男性。
彼こそが、錬金術師たちの代表者だ。
「ふむ、泥棒……ではないみたいだね」
「始めまして。私は──」
「ああ、君のことは把握しているよ。特級会員のツクル君だったね……そして、君がギルドに戻るよう説得して回っていることも、当然分かっている」
「なら、話が早くて済みそうです。私の要求は一つ、生産ギルドの所属する者としての義務を果たしてもらいたい」
いつものように書状を届けようとする……が、いちおう足元に拘束の魔法陣があったことを思いだして、それらしい演技をする。
「……あの、これを解除していただきたいのですが?」
「ふっ、この程度の罠に引っかかるような君の相手をしている暇は無いんだよ。だが、それでも入口のガーゴイルたちを突破した仕掛けを知りたいからね。いったい、どのような手段を用いたのかな?」
「……でしたら、こちらの条件を飲んでいただければ開示いたしますが」
「何を言っているのか。君は、一方的にその方法を伝えるだけでいいのさ。なに、心配は要らない。この私が開発した自白剤ならば、確実に君から情報を抽出するだろう」
そういって、試験管の中に入れた液体を見せつけてくる錬金術師。
開発したと言っているので、おそらく非合法なんだろうな……と察する。
「正気ですか? 私がここでされたことを報告すれば、自警団だって動きかねませんよ」
「君は情報を献身的に伝えた結果、精魂果ててそのまま力尽きてしまう……なんてことが起きてしまうかもしれない。臨床実験には、多少の犠牲も必要さ」
そうして近づいてきた錬金術師は、強引に俺の口の中へ液体を嚥下させる。
地面に落とされ、割れるポーション。
その中身は空、すべてが俺の体を通った。
「効果はすぐに浸透する。少しずつ意識が遠退き、体が言うことを聞かなくなっていくだろう……どうだい?」
「──あっ、いえ、まったく」
「…………ん?」
俺の反応が予想外だったのか、唖然とした表情をする錬金術師。
だがちゃんとした理由があり、俺には自白剤の効果が届いていない。
「方法は秘密ですが、私に嚥下させる毒は通用しません。そして、この距離まで近づいたあなたを逃すことも……」
「な、なんだこれは……雲だと!?」
「『雲縄』ですよ。さて、じっくりとお話ししましょう……これからの生産ギルドについて、ね?」
相手もやることをやっているので、こちらも手段を選ぶのはやめておく。
さて、最終的に『YES』と言わせればいいのだから……どういう方法にしよう?
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