虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
ギルド問題 その05
それからどんどん交渉を済ませていく。
鍛冶以外はあまり:DIY:を使わないで生産しておらず、面倒臭いうえどうしようもないということでそのままアイテムを見せた。
その結果は……まあ、予想通りだ。
「さて、残るはあと一人……錬金術か。こればかりは自信があるぞ、なにせ『錬金王』と情報交換をしたことがある男だからな」
《ヴァイア王国の錬金術師は、過激とのうわさです。実際、矢面に立って生産ギルドと対立していたのも錬金術師の代表者です》
「そうだな……鍛冶を除けば唯一、戦闘に直接使えるスキル持ちだし。うん、今回は結界の強度を高めておくか」
そういった設定をいくつか済ませ、錬金術師の長の拠点に辿り着く。
そこは鍛冶師のような一軒家ではなく、金持ちの屋敷のような建物。
「『錬金王』のアトリエも、いちおう屋敷だよな……錬金術師って、そういう場所に住むモノなんだろうか?」
《薬剤師や調合師といった者たちと違い、彼ら錬金術師は大規模な実験や生産を行う場所が必要となります。一定の地位を得た錬金術師は、それゆえに広い場所を確保したうえで高位の錬金に挑むのです》
「はあ……そりゃあ凄いな。たしかに、あんな物があるんだし……警戒心があるな」
屋敷の門には、二体の石像が佇む。
悪魔のようなデザインがなされたそれは、『ガーゴイル』という名を与えられている。
錬金術によって生みだされる、守護者のような存在だ。
素材は普通の鉱石でなく、魔力の籠もったヤツか……うん、金持ち特有のやり方だ。
「侵入者はあれを突破しないといけないし、その間に時間を稼がれるとより厄介なヤツが現れるって寸法か……よし、避けよう」
無駄な戦闘はできるだけ避けたいので、いつもの光学迷彩を使用して姿を隠す。
そして結界を足場に空中を歩き、ガーゴイルよりも上を渡って屋敷の中へ潜入する。
「目的地は……いや、さすがに直接乗り込むのは止めておくか。『SEBAS』、座標を建物の入り口にセットしてくれ」
《畏まりました。座標指定──完了。転移装置を起動──転移します》
鞘に仕込んだ転移装置が起動し、視界内に収めた屋敷の入り口に一瞬で辿り着く。
当然、ガーゴイルも反応できず相も変わらず門の上で待機している。
「……ふぅ、無事に入れたか。あとは真面目にドアのノッカーを叩けばよしっと」
仕掛けがあることは百も承知、軽く持ち上げた輪っかから手を放して音を鳴らす。
──するとけたたましい音が鳴り響き、俺の足元に魔法陣が生まれた。
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