虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
空いた生産ギルド
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やはり首都、それなりに暮らす人々の身形もよく、街を歩く人々には華がある。
服は綺麗だし髪は丁寧に櫛が通され、顔立ちもとても良い。
環境が身形に影響するという言葉があったが、まさにそれだろう。
さすがは王国の中心、それなりに儲かっているとよく分かる。
「さて、生産ギルドは……あれか。冒険ギルドよりは小さいが、それでも充分なサイズだな。中の工房とかもそれなりなのか?」
《旦那様の望まれるサイズではないかと。布の町エウストなど、一部の産業に特化している場合であれば異なるでしょうが……》
「まあ、うちの機材は:DIY:込みで創ったからそうなるんだけどさ。どこでも同じ品質が出せる方がいいと思ってな……いつも持ち歩くのは簡易版だし、ちょっと気になったんだよ。まあいいか、さっさと入ろう」
通りに面した場所に建てられた生産ギルドの中に入り、辺りを見渡す。
職人たちの姿はあるものの、混んでいるとは言いがたい……どういうことだ?
《稼いだ報酬で酒を酌み交わすことができる冒険ギルドと異なり、生産ギルドは飲食の行えるスペースもございません。依頼を受注後は自身が所有・所属する工房へ向かい、すぐに作業を始めるのでは?》
「それが普通か。ギルドは無くとも、やっていける状況ってことなのか? ……まあ、別に構わないが」
入口でそんな話をしているのも迷惑な気もするので、早々に受付嬢の立つカウンターへ向かう。
ただし、三つ在る窓口に対し、立っている受付嬢の数は一人。
城塞都市の場合、少なくとも受付嬢の数は足りていたはずなんだが……ここは首都、のはずだよな?
「あのー、すみません。少しお話をお伺いさせてもらってもよろしいでしょうか?」
「えっ? ええ、あっ、はい。生産ギルドに所属なされている方でしょうか? そうであれば、カードの提示をお願いします」
「はい──こちらです」
「はい、承り……えっ? これって、たしかあの…………しょ、少々お待ちください!」
ある程度予測していたのだが、特級会員専用のギルドカードの威厳は凄まじい。
活力、というかやる気を感じなかった受付嬢もそれを見るだけで目がシャキッとしていく様子がよく分かった。
それほどまでに、徹底した対応を義務付けられているのだろうか?
それとも何か、別の要因でも……そう考えていると受付嬢が戻ってくる。
「あ、あの、ギルド長が会わせていただきたいと申しているのですが……」
「構いませんよ。それと、そんなに緊張せずともこのカードに地位以外のモノを示すことなどできません……普段通り、とは言えないですが、少し気を抜いて対応してください」
「は、はい……分かりました。では、こちらへお願いします」
ギルド長か……始まりの街のギルド長と、どう違うのか。
まあ、この現状について訊いてみよう。
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