虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

仮想戦闘 中篇


連続更新中です(03/12)
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 どうせなら職業に合わせた戦闘スタイルをということで、少し前に作っておいた騎士剣サイズの『死天』生成アイテムを振るう。

「『騎士王』と『覇獸』を半々に」

 相手の能力を奪う【魔王】の権能を再現した籠手、『魔王の取腕』。
 取り込んだ強者の持つ能力を、完全にか部分的に振るうことができる。

 二人の権能は──万能と捕食吸収。
 ありとあらゆる力を振るえ、取り込んだ対象の能力を模倣できる能力。

 先ほどまで騎士剣は大振りでしか操れずにいたが、起動した瞬間一気に羽を得たかのように軽くなり、巧みに扱えるようになる。

「『覇獸』で『風兎』を再現してくれ」

 さらに起動した『覇獸』の能力で、俺を中心として暴風が吹き荒れる。
 その力を意識的に剣へ纏わせ、さらに軽くした状態で振るっていく。

「行くぞ!」

『…………』

 俺の掛け声に応え、人形も再起動して構えた武器を振るい始める。

 互いに同じタイミングで進み──急速に進み出た人形が先にこちらへ現れ、その勢いのまま武器を振り下ろした。

「技もなんにもないから、ただただ打ち合うしかないんだよな……これしかできないや」

 スキルとして戦闘に関するものを所持していないため、魔法も武技も使えない。
 そのため俺が使用できるのはただ一つ──装備が宿す能力だけだ。

「──『斬塵』」

 切り刻まれたことで生み出されたアイテムなのだが、わざわざ騎士剣として使うことが無かったので余っていたわけだな。

「はあ、そいやっと」

『……ッ!』

「おお、ようやく警戒してくれたのか。ただまあ、【騎士】でもなんでもないよな」

 ちなみに【騎士】の能力は、(騎士本開)というモノ。
 誰かを守るために戦う場合、能力値に補正が入るというものだ。

 まったく変動しない能力値はさておき、能力解放状態で騎士剣を振るう。
 効果は触れた相手を強制的に切り刻むというもの、だからこそ警戒されているわけだ。

 防御無視、絶対斬撃、そして本懐を遂げるまで壊れず手放さずの能力付き。
 少なくとも騎士の本懐って、そういう意味じゃない気もするけどな。

「……なんて、わざわざやってたのもそろそろ終わりにしようか。ここまでやれば油断するし──『転移装置』起動」

『ッ!』

「遅い。終わりにしようか」

 離れた場所から一瞬で背後に移動し、首に当てていた剣でそのまま掻っ切る。
 人形なので問題はないが……うん、やっぱり本当の対人では使えないな。

「……ふぅ、これでようやく終わったか。けど、転移無しじゃないと勝てないってのはダメだな。『SEBAS』、もう一度だ」

《畏まりました、再配置致します》

 改めて、配置してもらった人形に戦闘データを組み込んで模擬戦を行う。
 ──転移込みでも勝てない相手と、闘ってみようか。



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