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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

金属活用法



 報酬として受け取った『流体液体金属』、その難点は一定の量が無ければまったく使い物にならない点だ。

 そのうえ購入する場合は少量でも多額の金銭が必要で、入荷数もほんの僅か……性能はいいが使えない物の類だな。

「だがまあ、俺にはこれがある。さっそく増やしていこうか」

 魔物の素材にもよく使う、複製の魔道具。
 必要な量の魔力を支払うことで、あらゆるアイテムを完全な形でコピーできる。

 二つの魔法陣の内、出力側に一度液体流動金属を載せて情報を読み込ませておく。

 そして、もう片方の魔法陣の上に魔石を載せて起動すると……魔力が流れて術式を発動して──アイテムが複製されるのだ。

 ただ、今回は必要な魔力量が多いな……複製ができないわけじゃないので、多少の出費は気にせず魔石を使って液体流動金属を増やしていく。

「……とりあえず、一t分ぐらい増やすことができたな。これで何を作ろうか、何かいいものはないか?」

《それでしたら、やはりカエンの駆動部分の強化に行うべきでしょう》

「それなら、『SEBAS』の分も作らないとな……ちなみにだが、カエン一人分でどれくらい使うんだ?」

《一度錬金で加工する必要がありますので、おそらく……五百リットルほど必要になるかと。インゴット化で一リットル、人造魔物化の場合は五百tです》

 五百tって……異常だな。
 これは素体のすべてを液体流動金属にした場合であり、普通は混ぜ込む程度で効果を発揮するらしい。

「まあ、やれるならやってみようか……仮説だけで誰もやっていなかったことを試すのはやっぱり、面白そうだしな」

《では、液体流動金属を製造ラインに加えておきましょう。五百tの製造が完成したのちに報告致します》

「頼んだぞ……さて、カエンの強化をしないとな。どうやってやるんだ?」

《通常のゴーレムの場合、旦那様が錬金術によって合成する必要があります……ですが、カエンの場合は体内へ取り込むことで自己進化を行います》

 なんと素晴らしいゴーレムだったのか。
 作製者である俺自身も知らなかったことだが……もしかして、とっくに何度か経験しているのかもな。

「って、五百リットルもいったいどうやって取り込むんだよ」

《手をかざすなど、皮膚に触れるだけで構いません。飲む、食べるなどでも可能ですが効率に変化はございません》

 まあ、方法は分からないが便利な体だ。
 五百リットルも保存できるという点も、なかなかに気になる。

「まあ、液体流動金属に関してはまた今度だな。さて、今日は何をしようか?」

 決まっていない予定、だけどそれはいいことに違いない。
 捕らわれない自由な日々……休める憩いの時間ってのは、代えがたい日々だからな。


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