虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
聖騎士 後篇
『よ、弱いな……思った以上に』
「ええ、まあ。戦闘では私に負ける者など存在しません」
『それは自慢することなのか? ……まあいい。ならばそれを自覚して、いったいなぜこの場を訪れた?』
あえて誤解を解かなかったのは、ドラゴンの能力を解析するため。
だがそれを正直に言うほど、俺は真っ直ぐな人間ではない。
「先も申したように、【聖騎士】となるために牙を頂きに参りました……ただ、このような書状を受け取っております」
『むっ、これは……『騎士王』の紋章!?』
「そちらの見ていただければ、私の目的も理解していただけるかと。ただ……失礼ですが書状は小さいですので、私が読み上げた方がよろしいでしょうか?」
『親切なのだな。貴様……いや、貴殿は。だが不要だ。竜族の中には、このような術を操ることができる者が居るのでな』
膨大な魔力がドラゴンを中心に渦巻き、光がドラゴンを包み込む。
漏れ出す声は、人族には理解不能な特殊な言語……定番なら竜の言語だろう。
《はい。おそらく竜言語──精霊たちを魔力で捻じ伏せ、理を意のままに操るとされる竜特有の言語です》
「なんか凄そうだな……それ、人族でも使うことはできるのか?」
《竜の声帯を再現すること、また魔力量を高めることができれば可能かと。現在発動している魔法は、旦那様の総魔力の三分の一ほど消費しておりますが》
「……うん、別の方法を考えるか」
なんてことを話していると、光は収まり魔力も霧散していく。
そこに立つのは──人族の女性だった。
「……あの、服を着てくれませんか? 無ければこちらで用意しますので」
「何から何まで、貴殿は本当に善き人族だったか。だが無用だ、竜族の鱗は鎧であり服でもある──このようにな」
「ああ、無詠唱までできるのですか」
「いや、先ほどの“人化”と異なり、これは性質のようなものだ。鱗の形を自在に操ることは、魔獣の類いであれば大抵の者たちが行えることだ」
鱗の形が作り変わり、ドレスとして再形成されて彼女の身を纏う。
……白金色のドラゴンだったからか、髪もドレスも同じ色である。
そんな彼女に書状を手渡すと、魔力を通して封印を解除して中身を読んでいく。
目が左から右へ動いていき、少しずつ下へ下がり……すべてを把握する。
「……さ、酒!? 貴殿は、酒を持っているのか? だがしかし、そのような香りはどこにも感じさせてはいないのだが……」
「予め、自身に残っていた匂いは消しておいたので。交渉を提案します、貴方の満足がいくまでお酒を提供した場合、古い牙で構いませんので一本──」
「フンッ! ……こ、これでいいだろう?」
「え、ええ……では、すぐに準備します」
血が口から流れているドラゴンに一本ポーションを提供して、まず[ストレージ]の概念を理解させる。
それからもう一度、目的のアイテムを取りだして並べていく。
「──では、私はこれで。また何かありましたら、ぜひ呼んでください。貴方の不要な品と交換で、お酒も提供いたしますので……気に入っていただけたら、ぜひご連絡を」
「この香りで分かる、これらの酒は皆すべてが良い酒だ! 感謝するぞ!」
「ええ。では、これにて」
そんなこんなで牙を手に入れた俺は、無事『騎士王』の手によって【聖騎士】となる視覚を得た……まあ、別にすぐになる気はまったくないんだけどな。
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