虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

地下街迷宮 その09



 だいぶ前のことだが、俺の能力をコピーした魔物が現れた。
 しかしそれは一瞬のこと──『生者』を複製できなかった結果、虚弱故に死んだ。

 要するに、俺の身体スペックを完全コピーした場合自滅してしまう。

「けど、今回は神様絡みっぽいし……うん、ばっちり生き残ってるな」

『…………』

「じゃあ、始めよっか」

『…………』

 いつもの俺だったら、結界を展開したうえで『SEBAS』のサポートを受けて誰かの動きをコピーした戦いをしていただろう。

 しかし、今は結界が使用不可能なのでその闘い方はできない。
 ……えげつなさを選ばないなら、無くても再現はできるんだけどさ。

『…………』

「はあ、しかも俺の能力値とかは完全に無視しての複製だな。これって、もう外側だけしか同じじゃないだろう」

 拳をぶつけ、一瞬で理解する。
 俺と同じスペックなのであれば、それで決着が付いていたはず……相打ちで。

 だが拳は俺の腕を風船のように弾けさせ、そのまま心臓を貫いた。
 桁違いの身体能力によって、虚弱体質の雑魚が屠られただけの話だ。

「……まあ、コツコツやっていくか」

 セットしてある称号『貧弱な武力』が、確実にダメージを与えていく。
 ポーションを魔道具の中に仕舞っている俺なので、回復方法は無いはずだ。

『…………(フリフリ)』

「あれ? それ、ポーション?」

『…………(コクリ)』

「しかもそれ、エリクサーじゃん」

 こちらは[ストレージ]にも入れずにいたはずなのだが……なぜか鏡面体はそれを用意し、こちらに見せつけて──飲んだ。

「あっ、ストックもあるんだな」

『…………』

「となると、別の方法か──死はあるか?」

『…………(フルフル)』

 なるほど、それで罠が多かったのか。
 俺だけのオリジナルは何度でも戦える無限の残機、そして蘇る過程で手に入れることのできる即死級のアイテム。

 相手は代わりに回復アイテムを所持しているため、地道に倒す方法は使えない。
 せめてモルメスぐらい使えれば、時間も省略できただろうに。

「ただまあ、無い物ねだりをするわけにもいかないか──『刺殺の槍』」

 入り口で死んだとき、『死天』の効果によりアイテムが生成されていた。

 ……だいぶ後に気づいたのだが、ある程度アイテムの方向性を調整できるらしい。
 殺され方によるが、武器種を選べたりその武器が起こす効果を修正したり……とかな。

「まあ、槍なんて使えないけどさ。つまり、刺せば勝ちなんだ……やるだけやってみようじゃないか」

 なんだかこの台詞、物凄く使用頻度が高い気がするな……。
 うん、殺るだけ殺ってみよう……この過程でどれだけの俺が死んでいるんだか。


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