虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

地下街迷宮 その07



 立ちはだかるスライムでできた壁を乗り越えるため、迷宮ダンジョンの仕組みを上手く利用しなければならない。

「ここにあるのは毒の霧が出る罠と、槍が飛びだす罠。あとは落とし穴……」

 それ以上に大量の罠があるのだが、今回使えそうなのはこれだ。
 なぜなら、この三つだけ異様に再設置速度が速く設定されているからである。

「そこから動かない以上、落とし穴を使うのは無理だ。毒の霧も誘導しないとダメ……となると、槍を使ってみよう」

 槍の罠は踏んだ位置に合わせて、槍が射出される方向が変わるらしい。
 なのでそれを調節し、槍を壁の方向へ向かわせれば……成功だ。

「けど、それがどうしたって佇まいのままである。さて、どうしたものかねぇ……」

 とりあえず落とし穴に墜ちてみたが、特に意味もなく死んだ。
 蘇生位置を切り替えて帰還すると、今度は毒のスイッチを踏んで再び蘇る。

 これで『死天』の効果が発動し、新しくアイテムの生成に成功した。

「今思ったけど、あえて称号を無効化していなかったのはこのためか? ああ、届かない罠も上手く利用しろってことか」

 そう考えると、さらに選択肢の幅が広がるのでとりあえず忘れておく。
 流れで思いついたアイデアを、まずは試してからでもいいだろうし。

「おっと、槍が融け始めてる……急いでセットしないとな」

 槍が差し込まれた部分は、ある意味隙間と捉えてもいい。
 そこに今回生成された毒を盛って、しばらく待機する。

 状態異常からの回復も早いのか、一瞬毒のエフェクトとして色が付いたスライムもすぐさま回復していく。

 逆再生でも見るかのように、色が少しずつ透明になっていった。
 ……なんて光景を観つつも、たしかにスライムの回復速度が低下したのを確認。

 もう一つのアイテムを体に埋め込んで、準備ができたところで起動する。


「──『墜落死』!」


 落ちる穴を生みだすアイテムだが、今回は少し工夫されている。
 下に穴を作るのではなく、スライムを貫通するようにして構築されているのだ。

 貧弱スペックでは間に合わないので、先ほどの入り口で浴びせらせた炎をジェットエンジン代わりに急加速する。

 熱に焦がされる臭いがするのだが……まあそれは我慢しよう。
 そのお蔭で無事(?)、スライムの壁を突破することができたのだから。

「さて、次は何が用意されているのかな? 少なくともこれだけじゃないのは間違いないはずだ……警鐘も鳴っているし」

 今の試練みたいな物だけではなく、純粋に戦闘をする場所もあるかもしれない。

「……準備はしておくか」

 辺りで俺を殺せると判断できる罠は無数に存在する……それらを一つひとつ、踏んで起動させていくのだった。


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