虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

地下街迷宮 その06



「……横穴で繋がっているとはいえ、やっぱり関係ない場所なんだな……悪い意味で」

 難易度が桁違い、それは目の前の光景が証明していた。

「魔物は居ない。けど、何か居るな」

《罠が設置されておりますね。また、いくつか霊体の反応がございます》

「見えない敵か……厄介なこって。とりあえず、浮いておこうか」

《…………魔道具が使用不可になっているようです》

 そう言われ、所持している物を確認する。
 俺はある意味全身魔道具だらけなので、機能していないと困る物があるのだ。

「死に戻り……大丈夫か?」

《はい、『生者』のバージョンアップによって、称号のみで死に戻りの制御が可能となっております》

「前にもツッコんだが、その更新っていつの間に済んでいるんだ? ……まあ、どうしても知りたいわけじゃないからいいけど」

《詳細は私にも……旦那様に『超越者』としての証をもたらしたのは死神ということですので、おそらくそちらの干渉かと》

 死神様か……加護の解放やらでその名を見ることはあったが、あれから接点などはそれ以外まったくないな。

 俺以外、神から『超越者』の権能を与えられた者を知らないし、どういう関係性を持てるのか分からない。

「っと……死んでも問題は無いのか。だが、先へは進めないと」

 透明なスライムのようなモノが俺を殺す。
 それらは壁のような形状で立ち塞がっており、前に行きたくても進むことができない。

《魔道具が使えない以上、地道に攻略していくしかありませんね》

「そうだな……『貧弱な武力』があれば時間さえあれば……いや待て、こういうのってだいたい再生機能があるんだよな」

 魔道具が使えないため、魔道具ではないアイテムを取りだすこともできない。
 最低限、[ストレージ]に入れていた物が取りだせるくらいだな。

「というか、壁が一つとも限らないし……これはそれ以外の攻略法があるな」

《となると──罠でしょうか?》

「だろうな。俺自身が何度死んでもいい状況で、これ見よがしに並べられた罠。工夫して突破しろ……そういう意図なんだろう」

 俺に足りないお頭を使え、そうこの迷宮ダンジョンの開発者は言っているのだろう。

「ただ、『SEBAS』に頼りたい俺も居るけどな……悪いが今回は『修練の間』の解析優先で頼めるか? 危なくなったりギブアップしたくなったら言うからさ」

《畏まりました……お気を付けて》

 たまには自分でやってみようか。
 そんな気分で迷宮の攻略を始めた。

 ──なお、『SEBAS』との連絡は魔道具に加えて体に埋め込んでいた機械でも行えるようにしていたため、連絡できたのだ。


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