虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

地下街迷宮 その05



 そして辿り着いた五階層。
 本来であれば、全部の武器種に対応できるようにさまざまな距離から振るわれる武器との闘い方を学ぶ地は──物凄く混んでいた。

「これは……人がゴミのようだ」

 下へ降りる階段の途中からでも見える、人の行列。
 その大半の目的が例の横穴だというのであれば……おいおい、集まりすぎだろう。

「『SEBAS』、何が原因なんだ?」

《迷宮内の情報を知らず、興味本位でこちらへ赴いた者が多かったようです。故に迷宮へ挑まず混雑し、このような状況になったように思われます》

「要するにやじ馬が多かったってことか──仕方ない、『光学迷彩』と『天翔靴』を使って行くか」

《畏まりました》

 人が多いので転移するのも躊躇われ、とりあえず空を移動することに。

 何もない宙に足の踏み場が生みだされ、誰も居ない広い場所を歩けるようになった。
 そしてそのまま歩いていき──目的とである、横穴の上空までやってくる。

「……って、アレ何やってるんだ?」

《中に入った者が最初の関門を突破できるかどうか、それを賭けているようです》

「そりゃあ胴元もガッポリ儲かるな」

 おそらくアレ、突破できないだろうし。
 神様が何か手を加えたのであれば、間違いなくそういう仕様のはずだ。

「まあ、俺は金に困っているわけじゃないから、透明のまま入ることにしようか。このまま入るぞ」

《畏まりました》

 横穴らしき場所には、ちゃんとスペースを空けてくれている。
 そこに一度着地してから、ちょうど今から入ろうという男の後ろに付いて侵入した。

「さて、まずは何が──」

「ぎゃああああああああ! な、なんでスキルが使えな……いぎぃい!」

「あー、そりゃあ死ぬな」

 どうやら横穴内では、スキルが使用不可になるようだ。
 全身に棘を突き刺された男は、絶叫と共に死んでいく。

 魔道具の類いは使えるのか、未だに透明状態なのだが……どういうことだろうか?
 俺も同様の洗礼を受けたが、ただ死んだ証となるアイテムが残るだけだ。

「おっと、魔道具の解除は二つ目ってことなのか……あっ、死んだ」

 さらに歩を進めていくと、透明化が解除された状態で全身に炎を浴びせかけられる。
 焦熱死ということでアイテムがまた手に入り、炎は解除された。

「最後に魔法と……転移で強引に来たヤツを排除するのか」

 一番酷い死に方を用意したのか、全身にスライムが降り注ぎジワジワと俺の体を融かしていっている。

 ここに来る前に痛覚を完全に遮断しておいたので、感想と言えば湯に使ったような心地よさがある……ぐらいだ。



 そうしてスライム地獄を突破し、お土産として貰った溶解死のアイテムを持って歩いていると──

「おっ、階段があるぞ。これで初めての侵入成功だな」

《おめでとうございます》

 さて、いったい奥には何が待ち受けているのやら……できるだけ楽なのがいいなぁ。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品