虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
地下街迷宮 その02
待ってしばらくして、転送陣を使用する番が回って来る。
家屋の中にある陣の上に乗って、魔力を籠めると──景色が切り替わった。
「うわっ、広いなここ」
《空間属性の魔力を用いることで、可能な限り広さを拡張しているようです》
空間拡張の技術自体は、魔道具にだって使われている……だが、ここの拡張度は異常と『SEBAS』が教えてくれる。
もともとの迷宮が、10m×10mの広さが最低限無いと機能しない。
そこに階段用のもう一マス分なので、面積にすると200平方mぐらいなのだ。
しかし、ドローンによる計測が終わったこのエリアはそれがキロにまで広がっている。
これが現代日本に在れば、土地などの問題はバッチリ解決なのにな。
「ちょうど客も来ているし、売る機会にもなるのか。ちょっと気になりはするな」
《では、どうなされますか?》
「どうせ直接言ったって、才能が無いことがバレるのは分かっているさ。未だに魔力と器用さ以外は全部1だしな」
ステータスの恩恵にあやかっていれば、生後1ヶ月程度生きることで成長していく内に生命力や筋力の隠し能力値でもある攻撃力が上昇するだろう。
むしろ、俺が異常なのだ。
何かしらの行動をしていれば、生命力か攻撃力が増える。
また、縛りプレイをしている休人であろうとも、生命維持に支障が出るレベルで肉体スペックを縛ろうとはしないだろう。
「階層はまた下も繋がっているんだよな?」
《はい。この迷宮はすべての階層に同じ拡張技術が使われており、修練の邪魔にならないようになっております》
「なら、ドローンで一気に観察できるか。さすがに『超越者』とか【王帝】系の職業持ちの技術には敵わないだろうが、それでも参考になる武術があるかもしれない」
《畏まりました。旦那様が下に向かった後、ドローンを派遣しましょう》
理解できない動きも、『SEBAS』が解析することで結界を動かして擬似的に再現してくれる。
本来であれば、傀儡のように操られて振るう挙動が正しい威力を発揮することなどありえないが……言い方は悪いが、俺には抵抗する筋力も無いからな。
強引な操作であろうと最適化され、達人級の動きを行っていく。
足りない威力などは結界を固めたりすれば誤魔化せるので、とりあえず動きを学ぶ。
「まあ、とりあえず入ってみますか」
《はい、お気を付けて》
気を付けなくとも、練習相手として魔物は屠られていくんだろうけど……まあ、心構えとしては大切だよな。
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