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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

転移技術 後篇



「転移か……聞いたことがあるね」

「やはりそうでしたか。ギルド長であれば、知っていると思っていました」

「うんうん、ぼくでもちゃんと分かるさ──それが、伝説上の失われた技術だってね!」

 バンッと叩かれる机。
 湧き上がる衝動を堪え切れなかったのか、さらに立ち上がったギルド長。

「~~~~!」

「こんな小さな傷に最適な、新作の『ティアポーション』がございますが……お試ししてみますか?」

「あ、ありがとう……」

 スポイトがセットで用意されており、一滴それを垂らすだけで軽傷を癒していく。
 手の痺れにもちゃんと効くため、少し涙目だったギルド長も元通りである。

「……それで、転移技術を手に入れたとわざわざぼくに言いに来た理由は?」

「転移自体は比較的簡単な仕組みです。いずれ休人たちによって、同じことができる時代も訪れるでしょう……。なのでそれに先んじて、生産ギルドが権利を主張できるようにしておきたいのです」

「権利、ねぇ。すでに神々によって、転移技術は占有されているんだけど?」

「はい、それは存じています」

 だからこそ、噴水前にセーブ石なんて代物が設置されているのだ。

 神がそれを干渉できないようにしたため、置かれているだけで……解析も強奪もされずに維持できている。

 だが、禁じているのは世界間の転移のみ。
 そうでなければ、暗躍街の転移技術も何かしらの方法で封じられているだろう。

「セーブ石……いえ、こちらの人々にとっては記録石でしたね。それを媒介に、あらゆる場所へ向かえる転移陣を用意しました」

「! 記録石はどの国にも必ず一つはある。もちろん、そこには生産ギルドも……」

「移動であれば、空間魔法の使い手か同じく転移門を使えば簡単にできたでしょう。しかし今回の技術を用いれば、生産ギルドからどの街へも行くことが可能となります」

「……転移の魔法陣をギルドごとに用意していれば、ギルド同士で繋げることもできるんじゃないかい?」

 まあ、普通はそう考えるだろう。
 先ほど挙げた転移門だって、それぞれ門同士を繋げることで座標指定を簡単にできるようにした魔道具なのだから。

「いえ、これはあくまで転移魔法ではなく休人たちの死に戻りという技術を再現しているのです。彼らは記録石の下へ帰還しているため、私の転移もまたそちらへ移動することへなります……もちろん、例外はありますが」

「……この場合、もう例外が何かすぐに理解できちゃう自分が恨めしいよ」

「もちろん、独りで決められることでもないでしょう。ゆっくり気長に待ちますよ、ちょうど別の予定もありますので」

 そう伝え、別の場所へ転移を行う。
 覚悟はできた──どれだけ激しい精神攻撃だろうと耐えてみせる!


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