虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

霊体の問題 その20



 ──違法なコードによる干渉を確認

 ──使用者の特定……完了しました

 ──特例事項【救■者】を確認

 ──エラー 特例認定に必要なコードが確認できません

 ──対象を暫定【救■者】として判断 改めて判定を下します

 ──目的座標『第零次元第零世界』

 ──【救■者】による救■コードを確認

 ──『第零次元第零世界』による申請の真偽を確認できません

 ──個体の情報を『書』より引き出し……

      新たな干渉を確認

 ──『第零次元第零世界』からの許可が確認されました

 ──干渉を正常なモノと判断し、転移申請に許可コードを送ります

 ──対価を確認 『神練』の申請を受諾します

 ──この情報は 個体に秘匿されます

  □   ◆   □   ◆   □

 アイプスル

「よし、上手くいった…………んだよな?」

 なぜだろうか、一瞬で転移したはずなのにそこに違和感を感じるのは。
 人間では認識できない瞬く間に、何かしらのやり取りが起こった……みたいなノリは。

「『SEBAS』、分かるか?」

《……予めセットしておいたプロテクトが解除されております。私の認識外で、それを暴くだけの存在による干渉を受けました》

「マジかよ……やっぱり、非合法なコードを試したのが不味かったかな?」

《ですが、『アイプスル』が転移先に追加されているようです。これだけでも、今回の収穫になったと言えるでしょう》

 俺が現在立っているのは、準備しておいた複製版の転移魔法陣。
 一度降りてからもう一度その上に乗ってみると、本当にアイプスルが載っていた。

「……なんでだ?」

《上位存在による干渉のため、原因は不明です。しかし、アイプスルへの転移を阻害してこなかったことから、好意的な存在であることは判明しております》

「邪魔ができるのにしなかった……というよりも、するのが普通なのか。それを無視してくれた、サービスしてくれたのはプラスってことなのか」

 無関心の場合でも、おそらく非合法なコード入力によって問題視されていただろう。
 なのでこの場合のもっともいい結果こそ、今回のような対応を受けたパターンなのだ。

「まあ、とりあえずは無事に帰って来たことに感謝しようか。レムリアとの貿易も上手くいきそうだし、今のところ問題はない」

《はい、さすがは旦那様です》

「あの言語をできるだけ詳細に把握しておきたいな。『SEBAS』、これもやってもらえるか?」

《畏まりました。早急に手配します》

 一つの旅を経る度に、一つずつ課題を見つけていく。
 今回もまた、自分に必要な問題点を見つけることができた。

 ──人の振り見て我が振りを直せ……意味は違うが、まあそういうことだ。


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