虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
霊体の問題 その17
「貴方の名前は……いえ、やはり止めておきましょう。死に逝く者に訊くのであれば別ですが、貴方には生が確約されております。生きたまま、【幽王】様の下へ連れていくのが条件でもありますので」
「小僧が……」
「小僧で結構。しかし、若い力と言うのもなかなか捨てたものではありませんよ。あの世界では私も大人ではありますが、こちらであればまだまだ若輩者。若さと言うものに今一度縋ってみましょう」
「ペラペラペラペラと、いつまでも語ってんじゃねぇ! とっとと死ねぇええ!」
握り締めた武器──巨大な斧槍を大きく振り被って、俺を攻撃する。
だが瞬間的に物理結界を構築し、それを防ごうとする……が。
「そんな紙切れで防げると思うな!」
「……ああ、法則が違っていましたね」
見た感じから物理のみだと思っていたが、生まれつきの霊体たちにはそれ以外に籠めた力がある──魂魄力によって強化された一撃は、あっさりと結界ごと俺を引き裂く。
「では、今度はそれを踏まえての防御を行うことにしましょう。なに、失敗しても成功するまで繰り返せばいいだけのことです」
「不死身か……だが、必ず弱点がある!」
「そう思うのは結構。しかし、現実は必ず勝利できるほど甘くはありませんよ」
殺すことはできるだろう。
しかし、勝利することはできない。
それが俺……というか、『生者』の持つ厄介な点である。
封印という方法を取ったって、それは勝ちではなく時間稼ぎにしかならないしな。
それから男の猛撃が続いた。
途中からは結界でしっかりと防御できるようになったので、さらに力を籠めて強引に破壊するという方法でまた砕かれる。
その度に『SEBAS』が結界の硬度を調整し、ギリギリ力を籠めれば破壊できるというぐらいに変化させていった。
霊体の持つ可能性。
また、霊魔の身体能力などのチェックをするにはちょうどいい機会だったからな。
「では、そろそろいいでしょうか?」
「ば、化け物め……いったい何度殺せば本当に死ぬんだ!」
「死にませんよ、決して。死ぬのは私が死にたいと願ったときです。理不尽な死から逃れ続け、それでもなお死地へ向かわされる者へ与えられる力──それが『生者』ですので」
ポケットの中を弄り、何かいいアイテムが無いかを探してみる。
すると、このタイミングにピッタリなアイテムを発見した。
「では、終わりといたしましょうか。このまま貴方は何もできずに【幽王】様の下へ輸送されるのです」
箱型のアイテムを投げると、男はそれを切り裂いて破壊しようとする。
そして、閃光が辺り一帯を包み込み──争いは終結した。
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