虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
霊体の問題 その13
「──以上がメリットとなります。ご清聴、ありがとうございます」
いや、使い方はおかしいが……この場合は『ご静聴』かもしれないな。
聴いてくれたことに感謝するのではなく、静かにしていたことに感謝するわけだし。
シーンという効果音が用意されそうなほどの静寂が、この場を支配している。
その理由は俺の目の前……ピクピク動かなくなってしまった男の姿だろう。
『撮影終了。以降、待機モードへ移ります』
「お疲れ様……ふぅ、俺もだな」
『疲労を確認しました。収納ポケットより、飲み物を提供します』
「おっ、気が利くな。ありがとう」
やっぱり、物凄い勢いで学習して成長しているのでは……そう思わざるを得ない人形に内心驚愕しつつ、飲み物を受け取る。
「んぐっ、んぐっ……ぷはぁ」
ポーションを混ぜずに、何かしらの薬草を混ぜてあるようだ。
鑑定を使っていないので誰が作ったのか分からないが、少なくとも俺が作った覚えのない味だった。
それをなぜ、人形が持っているか……そう考えると身内の作ったヤツなんだろう。
「しかしまあ、あっさり倒せたな」
抵抗が激しかったので、人形たちによる鎮圧が行われた結果が目の前の男である。
俺も最初は心配だったが、攻撃が当たったと分かった瞬間心配は失われた。
その最中、強引に俺を攻撃しようとしたのだが……人形は『SEBAS』の演算結果に従って動いているので、それすらも読まれてカウンター。
最終的に自滅で終わった抵抗であった。
「お蔭で連絡もすぐに終わったし。見せしめも用意できたからいいんだけどさ……あとどれくらいで十分になる?」
『残り時間──十一分二十三秒です』
「わりとあるな……さっきまでのアレ、三分で済んだのかよ」
用意されたカンペを読むのに必死だったため、気づくことができなかった。
まあ、予定通りに事を進めることができてよかった……ぐらいの感想ではあるが。
「一分か……さっきのアレ、美味しかったからもう一杯貰えるか?」
『畏まりました』
「……うん、やっぱり旨いな。今度、俺もこれに負けない味を作ってみることにしよう」
ちなみに味なのだが、麦茶とウーロン茶のブレンドみたいな感じだ。
麦もお茶の葉も冒険世界で見つけては居るので、その気になれば作れるだろう。
『残り十分となりました』
そんなこんなで時間を潰していると、再び定刻となったことを告げるタイマー係。
今度は分かりやすい実例を……と言いたいところだが、つい先ほど見せてしまった。
さて、いったいどうしようか?
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